文:岩崎京子 画:二俣英五郎 出版:教育画劇
大事な娘の結婚相手には一番偉い相手を選びたい。
それは当然の親心。
でも、上には上がいるもので、一番偉いものには中々たどり着けません。
娘の婿殿は一体誰になるのでしょう。
あらすじ
あるところに父、母、娘のネズミの家族がいた。
娘が年頃になったので、親戚のおじさんが縁談を持って来た。
父は娘を嫁にやりたくないので、断ろうとしたが、おじさんは食い下がってくる。
そこで、父は「お天道様のように一番偉いやつに嫁にやる」と口を滑らせてしまった。
すると、世話好きのおじさんは、本当にお天道様に縁談の話をしにいってしまった。
おじさんがお天道様に縁談の話をすると、お天道様は言った。
「一番偉いのは、わしの姿を隠してしまう雲どんだ」と。
そこでおじさんは雲どんの所に行った。
雲どんに縁談の話をすると、雲どんは言った。
「世界一は、私を吹き飛ばしてしまう風どんだ」と。
そこでおじさんは風どんの所に行った。
風どんに縁談の話をすると、風どんは言った。
「世界一の婿は、おいらが吹きまくってもびくともしない壁だ」と。
そこでおじさんは壁の所へ・・・。
一番偉い婿殿は見つかるのでしょうか。
『ねずみのよめいり』の素敵なところ
- 次へと繋がっていく繰り返し
- 「偉い」の視野を広げてくれる
- 方言風な口調ながらわかりやすい文章と、わかりやすいページ割り
この昔話の一番の特徴は、次々と繋がっていく繰り返しにあると思います。
一番偉いものを太陽は雲と言い、雲は風と言い、風は壁と言う。
次の相手からさらに次の相手へというたらい回しの繰り返しが、「次は誰だろう」と一緒に「どんな理由だろう」という面白さも足してくれるのです。
そんな「結局誰が偉いんだろう?」という繰り返しを見ていく中で、「偉い」や「強い」の基準が色々と見えてきます。
すると、「こういうところは一番偉いけど、こういうところは確かに弱い」と言うように、価値観の多面性が見えてきます。
そうしてたどって行った時に、まさかの相手が一番偉くなるという、不思議な面白さもこの昔話の魅力です。
さて、そんな魅力的な昔話を、昔話の雰囲気を残しつつも、かなりわかりやすく描いてくれているのがこの絵本です。
しゃべり口調が田舎の方言のようで、すごく昔話の雰囲気を楽しめます。
ですが、意味のわかりづらさは抑えられていて、端々がわからなくても大筋は聞き取れるようになっているのです。
また、それは話の展開に過不足ないページ割りのおかげでもあります。
展開に対して、しっかり絵が動いていくので、聞きなれない口調でも無理なくお話に入り込めるのです。
数ある昔話「ねずみのよめいり」の絵本。
その中でも、昔話の雰囲気とわかりやすさを見事に共存させた絵本です。
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