作:かこさとし 出版:偕成社
香ばしいいい匂いのするパン屋さん。
カラスのパン屋さんにも、夢と工夫のいっぱい詰まったたくさんのパンが並んでいます。
読めばパン屋に行きたくなる。
そしてパンを頬張りたくなる絵本です。
あらすじ
あるところに、いずみがもりという森があり、そこはカラスの町でした。
木の上にはみんなカラスの家があり、その中にパン屋さんもありました。
そのカラスのパン屋さんの家に、4羽の赤ちゃんが生まれました。
しかし、お父さんも、お母さんも赤ちゃんたちの世話に大忙し。
パンを焦がしてしまうことが多くなり、店の掃除も行き届かなくなりました。
それに伴い、お客さんも減っていき、家族は貧乏になっていきました。
お父さん、お母さんは心配していましたが、そんな心配をよそに4羽の子どものは元気に育っていきました。
そんなこんなで、売れないパンは子どもたちのおやつになりました。
子どもたちがおやつのパンを食べていると、他のカラスの子どもたちがやってきました。
おやつパンに興味を持っているので、少し分けてあげるとたちまち大人気。
みんな「明日買いに行くから、パンを取っておいてね」と口々に言いました。
さっそくお父さんと、お母さんに伝え、パン作りを始めます。
4羽の子どもも手伝うことに。
そして、美味しいパンがたくさん焼けました。
次の日、子どもたちがやってきて、たくさんパンを買っていきました。
さらに、お父さん、お母さん、子どもたちはみんなで考えて、さらにたくさんのパンを作り、お店も綺麗に掃除しました。
パンの香ばしい匂いが森いっぱいに広がると、さっそく子どもたちが大勢パン屋さんに向かって飛んでいきました。
それを見た近所のカラスも「パンが焼けて大売出し中」と知り、パンを買いに行きました。
それを聞いた近所のカラスは「パン屋の店で焼けた」と勘違いし、消防署に連絡しました。
消防車が出動したので、けが人もたくさん出たと救急車も出動。
救急車が出動したので、大事件だと武装警官の一連隊も出動。
騒ぎはどんどん大きくなって、森中のカラスがパン屋さんに集まる大騒ぎになってしまいました。
カラスのパン屋さんは一体どうなってしまうのでしょう。
『からすのパンやさん』の素敵なところ
- 4羽の赤ちゃんの成長する姿が微笑ましい
- 工夫と夢がいっぱい詰まった所狭しと並ぶパン
- 連鎖していく大騒ぎ
パン屋さんに生まれた4羽の赤ちゃん。
パン屋さんが大変になりながらも、元気に育っていく姿がとても微笑ましい絵本です。
赤ちゃんの時は思い切り泣き、お父さんとお母さんはそれに合わせててんてこまい。
赤ちゃんを卒業すると、今度は転んだり、けんかをしたり毎日大騒ぎ。
でも、おやつパンを「世界一のパン」と他の子どもたちに自慢するなど、家族やパン屋さんへの誇りも随所に感じられるのがまた素敵です。
そしていよいよパン作りや、店の仕事も手伝うように。
家族で協力してパンを作る姿を見ると、自分でも作りたくなってきます。
そんな家族の協力で出来たパンは、子どもの発想も取り入れた、とってもバリエーション豊かで工夫に富んだものでした。
それが細かく、見開きいっぱいに描き込まれているのです。
クジラパン、テレビパン、恐竜パン、自動車パン。
さらにはかこさとしさんお馴染みの、だるまパンにてんぐパンも。
「あ!だるまちゃんもパンになってる!」と子どもたちもすぐ気づいていました。
また、「私は○○パン」「僕は○○パンがいい」という、お気に入りパンを探すのも楽しいページです。
そんなパンを巡って、まさかの事件が起こります。
小さな勘違いから、どんどん大きくなっていく騒ぎ。
その勘違いの積み重ねと、怒涛のたたみかけるような展開が子どもたちをドキドキの世界に引き込みます。
また、言葉遊び的な面白さもあり、子どもたちは「パンが焼けたなのに!」と勘違いに呆れつつも楽しそう。
あれよあれよと勘違いが連鎖して、パン屋さんの上空があっという間にカラスで埋め尽くされる様は圧巻の一言です。
そして、その大騒ぎの収め方も、とっても良く出来ています。
読むとパン屋さんに行きたくなる。
今すぐに香ばしいパンを頬張りたくなる絵本です。
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