じっちょりんとおつきさま(4歳~)

絵本

作:かとうあじゅ 出版:文溪堂

町の片隅に住んでいる、不思議小人じっちょりん。

虫のような、人のような、妖精のような不思議な魅力たっぷりのじっちょりん。

そんなじっちょりん家族の、楽しくて神秘的なお月見のお話です。

あらすじ

ある朝、空き地の片隅で、不思議な小人じっちょりんの家族が朝ごはんの準備をしていました。

パパじっちょりん、ママじっちょりん、お兄ちゃんじっちょりん、妹じっちょりんの四人家族です。

朝ごはんが完成し、はなはっぱサンドを食べながら、パパじっちょりんがお月見について話し始めました。

お月見には自分たちで作った籠に、ごちそうや、おもちゃや種を詰めた、おたのしみの実を作るというのです。

そこで、公園に行き材料を集めることにしました。

公園への道を探すため、高いところに登ってみることに。

じっちょりん家族はマンホールや、コンクリートの溝を進んでいきます。

なんとか歩道の手すりの上に登ることが出来、道を確認することが出来ました。

公園に着くと、パパじっちょりんは大きな籠を、ママじっちょりんはごちそうを作ります。

子どもたちはおもちゃを作っていきました。

完成したものをパパじっちょりんが作った籠に入れ、ふたを閉めればおたのしみの実の完成です。

その頃には、辺りはすっかり暗くなっていました。

お月見の会場には虫たちの合唱が案内してくれるといことで、落ち葉のイスに腰掛け待っていると・・・。

鈴虫や松虫、コオロギたちの合唱が聞こえてきました。

じっちょりん家族は虫の音のする方へ歩いていきました。

すると、こっちょりん家族や、たっちょりん家族など、他の家族もみんな集合。

どの家族もおたのしみの実を持っています。

集まった家族はおたのしみの実を中心に集めて、その周りを踊り始めました。

踊りをやめた時に目の前にあるおたのしみの実をいただくのです。

最初は雲に隠れていたお月さまも、踊りを見ているうちに顔を出し、それを合図に踊り終わりました。

みんなで一斉におたのしみの実を開けます。

ママたちはごちそうを食べながらおしゃべりに花を咲かせ、子どもたちはおもちゃに夢中です。

その頃、パパたちはススキの穂先に掴まって、なにやら跳ね回っています。

パパたちも遊んでいるのでしょうか。

いえいえ、パパたちはとっても素敵なもの準備していたのです。

『じっちょりんとおつきさま』の素敵なところ

  • 何回でも言いたくなる言葉「じっちょりん」
  • 身近な自然図鑑と物語の融合
  • 幻想的な最後の場面

この絵本の特徴的な言葉「じっちょりん」。

種族の名前のような、家族の名前のような、色々な解釈が出来る不思議な言葉。

でも、間違いなく言えるのは、その語呂と響きの良さだと思います。

本文にもたくさん出てきます。

1ページに4回くらい出てくることもあります。

でも、言えばいうほど、聞けば聞くほど、もっと言いたく聞きたくなる不思議な魅力があるのです。

最初は「じっちょりんてなんだろう?」と言っていた子も、「じっちょりんかわいいね!」とファンになっていたり、「じっちょりん、じっちょりん」ととりあえず言ってみたりしていました。

言いにくそうで、物凄く言いやすいのも面白いところです。

そんなじっちょりん家族の活動の場は、人間にとってとても身近なところです。

空き地や公園などで普段目にする場所や生き物、植物の中でじっちょりんは暮らしています。

普段、関わっている身近な自然を使って、ご飯を作ったり、おたのしみの実を作る姿にはとても親近感が湧きます。

また、不思議な現実味もあり、普段の公園の中にじっちょりんがいそうな場所を探せるほどです。

このじっちょりんたちの行動や物語も魅力的なのですが、それに図鑑の要素も足されているのがさらに素敵なところです。

じっちょりんたちは物凄くファンタジーに描かれていますが、町並みや自然などはとてもリアルに描かれています。

そこに草花や虫の名前をしっかり書き入れてくれてあることで、身近な自然図鑑のようになっているのです。

しかも、多すぎず、少なすぎず、目に触れる機会の多いものだけ描かれているのもポイントです。

公園に行って「あ、これじっちょりんに出てきた!」

絵本を見て「これ、あの公園にあるよ!」

が、たくさん出てくるのです。

さて、そんな親近感の湧く楽しさが詰ったこの絵本ですが、最後は幻想的な体験が待っています。

パパたちが準備したもの。

それはお月見を心から楽しむためのものでした。

その最後の場面。

思わず「大きい・・・」「きれい・・・」とうっとり。

本当にお月見をしているような感覚が待っていました。

身近な自然や場所と、じっちょりんという小人のファンタジーな物語の融合。

リアルと幻想が見事に調和した秋に読みたい絵本です。

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