ねるじかん(3歳~)

絵本

作:鈴木のりたけ 出版:アリス館

起きた時、夢と現実の境目があいまいな時はないでしょうか?

「あれはどこまで夢だったんだろう・・・」

考えても考えても、その境目がわからない。

そんな不思議な体験を呼び起こしてくれる、不思議な絵本です。

あらすじ

夜、寝る時間になった。

お母さんが布団に入っても、男の子は寝ようとしない。

「なにがあってもしらないわよ」

とお母さんは言って寝てしまった。

すると、男の子の目の前で、部屋のドアが「ぐゆぅぅぅぅぅ」と歪んだ。

お母さんを起こし「ドア!」と伝えるも、お母さんがドアを見るころには元に戻っていた。

お母さんはドアが少し開いていることを言っているのだと思い、ドアを閉めてまた寝てしまった。

男の子は布団に入った。

しかし、部屋の様子がおかしい。

壁がもこもこしたり、ねとねとしたり、窓がうねうね、ドアはまたぐにゅぐにゅ~となっている。

男の子が起き出すと、窓の外に魚の形の宇宙船がやってきて、中から宇宙人が出てきて町へ降りていく。

お母さんに「さかな!」と伝えるも、お母さんが起きて窓を見た時にはもう宇宙船は通り過ぎていた。

お母さんはカーテンのことを言っていると思い、カーテンを閉めた。

男の子は寝たふりをして、お母さんを安心させると、窓から外に飛び出した。

町では不思議なことが起こっている。

ポストが歩き出し、電線を走って、おばあちゃんに手紙を届けたり、

恐竜の迷子にお巡りさんが困っていたり、

ビー玉が空に浮かんでいたり。

そして気付けば、布団の中でお母さんと眠っていた。

でも、次の朝・・・。

『ねるじかん』の素敵なところ

  • 幻想的な夜の街と部屋のおもちゃたち
  • 外にいても常に聞こえるお母さんの声
  • まさかの展開が待つ最後のページ

この絵本の魅力はどこか不気味で、とても幻想的な描写や風景にあると思います。

特に夜の町は、いくらでもいつまででも見ていられるほど、その幻想的な様子に目を奪われてしまいます。

田圃を走る新幹線、ビー玉の惑星、山には恐竜の巣穴があり、庭でティラノサウルスを飼っている家もあります。

町の奥に広がる海には、目覚まし時計が半分沈み、ピラミッドが顔を出している。

一見、ばらばらの世界観が、ものすごい統一感で一つの町に収まっているのです。

そして、この町にあるものと、男の子の部屋にあるおもちゃがリンクしているのも面白いところです。

迷子の恐竜は男の子が手に握りしめている恐竜の人形と同じだったり、魚の宇宙船は枕元にある図鑑の表紙になっています。

ビー玉も、新幹線も、目覚まし時計も全部、男の子の部屋の中にあるのです。

それに気づいた時、あの町が夢なのか現実なのかがあいまいになってきます。

さらに、そのあいまいさを引き立てているのが、お母さんの声です。

その声は、男の子が家から飛び出し、一人で探検している時も聞こえてきます。

ポストが手紙を持って走り出した時、男の子が「お手紙!」と言うと、お母さんの「お手紙は今日おばあちゃんに出したんだよね」という返事が聞こえてきます。

「迷子!」と言うと、「誰が迷子なの?」とやっぱりお母さんの返事が。

外にいるのに、部屋の中にいるような、夢なのか現実なのかわからない、そんなあいまいな夢の中にいる感覚に、見ている人を誘ってくれるのです。

読めば読むほど、どこまでが現実で、どこからが夢だったのか悩ましいこの絵本。

最後のページにまさかの展開が待っています。

朝になり現実の町に戻ったのを見て子どもたちは結論付けます。

「全部、夢だったんだね!」「いつから夢を見ていたんだろう?」

と、夢談議が始まろうとしたとき、その衝撃の最後のページが現れます。

そして子どもたちに、楽しい混乱が訪れるのです。

幻想的な絵と、想像力豊かな男の子とともに、起きていながら夢の中に入り込む。

そんな不思議で素敵な体験ができる絵本です。

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