作:ミラン・マラリーク 訳:間崎ルリ子 絵・あな:二見正直 出版:偕成社
靴下やズボンなどに気付いたら空いている穴。
放っておくとどんどん大きくなってしまいます。
大きくなった穴はある日旅に出ることに。
不思議な穴の冒険が始まります。
あらすじ
昔、あるところに赤い靴下がありました。
その靴下には穴が空いていました。
誰も繕ってくれなかったので、その穴はどんどん広がり、ついには靴下を飲み込んでしまいました。
そこで穴はタンスから飛び出し、外に出ていきました。
しばらく行くと、ドーナツに会いました。
ドーナツがどこへ行く予定もないと言うので、一緒に行くことにしました。
穴とドーナツが進んでいくと、カエルに会いました。
カエルもどこへ行く予定もないと言うので、一緒に行くことにしました。
さらに行くと、ツバメ、羊に出会い、やっぱり一緒に行くことに。
5人になって歩き続けると、森の中の小屋へたどり着いたのです。
くたびれていた5人はここで休むことにしました。
さて、夜も更け寝静まったころ、ずっと後をつけていたオオカミが、小屋の中へ入ってきました。
そして、羊を見つけパクリ!
次にツバメ、さらにカエル、そしてドーナツもパクリ!
と、次々に食べていったのです。
最後には穴もパクリ!
と飲み込まれてしまいました。
ところが、穴がオオカミのお腹に入ると、お腹にも穴が空いてしまいました。
それを見て、羊が穴から飛び出しました。
そして、ツバメ、カエル、ドーナツとみんなオオカミのお腹から外に出てきたのです。
しかし、それだけでは終わりませんでした。
オオカミのお腹に空いた穴が・・・。
『あなのはなし』の素敵なところ
- 本当に穴が空いている
- 穴の特性を最大限活かしたまさに『あなのはなし』
- よく考えると結構怖い
この本を読んで、まず驚くのは本当に穴が空いていることでしょう。
靴下を穴が飲み込んでしまうと、ページにも靴下の形の穴が空いているのです。
本当の穴が外に飛び出し、歩いていく姿はそれだけで驚きと楽しさが溢れ出ています。
「本当に穴が空いてる!?」と子どもたちも大興奮です。
その穴へのこだわりは、物語の作りにも大きく影響しています。
穴を主人公にするという発想もそうですが、オオカミのお腹に穴が空いてしまうという発想はさらにすごいと思いました。
奇想天外かつ、流れがものすごく自然なのです。
ありえないのに「そりゃそうなるよね」と思わせてくれる。
また、本当にページに穴が空いていることも、なんだかリアリティを感じさせてくれるポイントなのかもしれません。
そんな穴を自由自在に使いこなしているお話ですが、オオカミから逃げて終わりではありませんでした。
そこには衝撃的な結末が待っていたのです。
そのオオカミの末路を考えた時、自然に頭に浮かぶのは自分の衣服に空いた穴。
これをそのまま放置すると・・・
と考えてみると、中々ゾッとさせてくれます。
穴を活かしたとても面白い昔話風の物語。
でも、その裏に「穴はちゃんと繕った方がいいよ」というメッセージを感じる仕掛け絵本です。
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