文:デイヴィッド・ラロシェル 絵:リチャード・エギエルスキー 訳:椎名かおる 出版:あすなろ書房
物語を終わらせる言葉「めでたしめでたし」。
でも、もし終わりから始まる物語があったらば・・・。
そんな「もしも」に応えてくれる一風変わった物語。
始まりにはまさかの結末が待っています。
あらすじ
めでたしめでたし。
騎士とお姫様は結婚して末永く暮らしましたとさ。
どうして、2人が結婚したのかというと・・・。
ずぶ濡れの騎士とお姫様が恋に落ちたからです。
どうして、恋に落ちたかというと・・・。
お姫様がボウルいっぱいのレモネードを騎士に浴びせたからです。
どうして、レモネードを浴びせたかというと・・・。
騎士の立派な髭に火が付てしまったからです。
どうして、火がついてしまったかというと・・・。
洞穴に住むドラゴンを騎士がくすぐったからです。
どうして、くすぐったのかというと・・・。
はてさて、物語の一番最初のきっかけはなんだったのでしょう。
『めでたしめでたしからはじまる絵本』の素敵なところ
- 発想と構成とタイトルが読む前からおもしろい
- 伏線回収の繰り返しによる、ミステリーのようなおもしろさ
- 最後に待ち受ける意外な原因
まずは何を置いても、このタイトルでつい手に取ってしまいます。
そして、少しページをめくってみると、どうなるか気になって、最後まで読まずにはいられません。
一冊の絵本として存在するだけでおもしろいのだから反則です。
本棚に並んでいる時の存在感がすごいのです。
そんな外見で目と興味を引くこの絵本ですが、もちろん内容も魅力的です。
それはまるでミステリーを読んでいるよう。
それも伏線がどんどん明らかになっていく、最後の場面の面白さだけを濃縮しているのだから、真相が気にならないわけがないのです。
しかし、子どもには複雑な構成でもあります。
そこで活きてくるのが、繰り返しのわかりやすい構成です。
最初は次々起こる展開に「なんで?」と困惑気味だった子も、
「どうして、2人が結婚して、末永く幸せに暮らすことになったのかというと・・・」
のように、前の文章を振り返りつつ「どうして・・・かというと・・・」という決まり文句の後に、その原因が出てくる構成の繰り返しによって、段々と流れがわかってきます。
すると、「なんで?」もワクワク感のあるものに変わります。
次のページでその理由が明かされることがわかっているので、安心して疑問を持てるのです。
次のページが楽しみ過ぎて、一緒に「というと・・・」と言ってみたりと、ワクワクが声にも出てきてしまうのもおもしろいところ。
さて、そんな次々と明かされていく原因ですが、その大本はまさかの出来事でした。
まさかの人物による、些細なきっかけが、まさかお姫様の結婚にまでつながるとは・・・。
物事が少しずつ関連して大きくなっていく、まるでバタフライエフェクトのような面白さを感じられます。
インパクトの大きな外見を持ったこの絵本。
ですが、中身は出来事の原因を一つずつじっくりと紐解いていく、知的な面白さが詰め込まれた物語です。
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