作・絵:ウィルとニコラス 訳:わたなべしげお 出版:福音館書店
クリスマス・イヴに森に出かけた男の子。
足跡を見つけ辿っていくと、動物たちのクリスマスパーティーに参加することに。
そこには素敵なクリスマスの奇跡がたくさん待っていました。
あらすじ
クリスマス・イブの日。
男の子デービーは夜になるのが待ちきれず、ソワソワしていました。
そんなデービーを見かねて、お母さんが「雪の中でも歩いてきたら?」と言いました。
デービーは森の動物たちへの贈り物を準備すると家を出ました。
デービーが贈り物を切り株の上に広げ、家に帰ろうとしたその時。
雪の上に足跡がついているのを見つけました。
足跡をたどり森に入っていくと、罠にかかったキツネがいます。
驚くことにキツネはデービーに話しかけてきました。
どうやら、クリスマス・イブだから話が出来るということのようです。
デービーが罠を外してあげると、キツネはデービーをパーティへ案内してくれました。
デービーとキツネが空き地に着くと、次々と動物たちが集まってきます。
そして、最後にやってきたのはサンタクロース。
動物たちにプレゼントを渡していきます。
動物たちにプレゼントを配り終わった後、デービーはサンタクロースに言いました。
「子ウサギを一匹欲しかったんです」と。
それを聞き、サンタクロースはウサギのお爺さんにお願いしてくれました。
ウサギのお爺さんは子ウサギたちに「デービーの所に行きたい子はいるか?」と聞いてみます。
すると、一匹の子ウサギがデービーの腕の中に飛び込みました。
その後も森のクリスマスパーティーは続きます。
ごちそうに、ゲームなど森の動物たちと楽しい時間を過ごすデービー。
そうこうしているうちに、辺りが暗くなってきました。
デービーは帰ることに。
シカが家まで送ってくれることになり、デービーが背中にまたがると、シカは風のように駆けていきました・・・。
目を覚ますと、そこはデービーの部屋のベッドの上。
あれは夢だったのでしょうか?
『クリスマスのうさぎさん』の素敵なところ
- 現実感とファンタジーの絶妙なバランス
- 互いの気持ちを考える本当の意味で優しい世界
- 夢落ち?それとも・・・な最後
この絵本は現実感とファンタジーな要素が、物凄く絶妙なバランスで取り入れられています。
この世界では人間は人間だし、動物は動物です。
お互いの言葉はわからないし、普段は話すことなんで出来ません。
しかし、この日はクリスマス・イブ。
キツネに言わせると「(話が)できるとも。今夜はクリスマス・イブじゃないか」とのこと。
読み手と同じリアルな世界観の中で、クリスマス・イブだから起こっている奇跡と出会い、そこからファンタジーな世界に入り込んでいく・・・。
この自分たちの生きる世界と地続きのファンタジーがとても魅力的なのです。
また、その世界が人間本意ではなく、動物と平等なのも素敵なところ。
サンタクロースはデービーに子ウサギが欲しいと言われて「はい、どうぞ」とはあげません。
まず、ウサギのまとめ役であるウサギのお爺さんに聞いてみます。
そのお爺さんも子ウサギたちに意思を確認します。
そして、自分の意志でデービーの所に茶色い子ウサギが行くのです。
これはデービーの気持ちも、子ウサギの気持ちもしっかりと考えた本当に素敵なやり取りだと思います。
きっと、この二人はずっと仲良く、互いを大切にしていくのだろうなと感じさせてくれます。
一方の目線に立った優しさではなく、みんなの目線を考えた、本当の意味で優しい選択肢だと感じました。
さて、そんな楽しいひと時の最後は、まさかの終わり方でした。
気付いたデービーがいたのは自室のベッドの中。
日付はクリスマスになっています。
あれは夢だったのか・・・。
と、思いきや最後ににくい演出が。
夢だったとも現実だったとも取れる、現実とファンタジーの境界の曖昧さがここでもうまく活かされます。
気付けばファンタジーの世界に足を踏み入れている。
楽しくて優しくて、不思議なクリスマスの奇跡を描いた絵本です。
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