作・絵:ロジャー・デュポアザン 訳:なかにしゆりこ 出版:新世研
サンタのソリを引くのはトナカイです。
でも、トナカイがみんな風邪を引いてしまったら?
今年のクリスマスはトナカイではなく、クジラと世界を周るみたいです。
あらすじ
いつもより寒い冬。
雪も降り続け、サンタの家がすっぽり雪に埋まってしまうほどでした。
その寒さから、サンタのソリを引くトナカイたちが全員寝込んでしまったのです。
医者を呼ぶと、「2~3週間安静に」とのこと。
しかし、クリスマスまでは1週間しかありません。
サンタはどうしたらいいか悩みました。
悩むサンタさんを見て、ハスキー犬や、シロクマや、セイウチとアザラシなど、動物たちも何かいい案はないか考えました。
そんな中、海を泳ぐタラに名案が。
早速、サンタに伝えます。
それはクジラに頼むということでした。
クジラに頼んでみると快諾してくれたので、早速プレゼントをクジラの背中に積み込みます。
動物たちも手伝ってくれ、あと一個で全部と言う時に、クジラが「これ以上は無理だと」言い出しました。
仕方なく、その一個は来年に回すことにして、サンタとクジラは出発しました。
最初に着いたのはニューヨークの港でした。
積み荷を降ろすと次の大陸へ。
サンタとクジラは無事にプレゼントを配り終えることが出来るのでしょうか。
『サンタをたすけたくじら』の素敵なところ
- ロマンあふれるサンタとクジラの取り合わせ
- 積み荷の上げ下ろしなどが妙にリアルで納得感がある
- 残された一個のプレゼントの行方
この絵本の一番印象的な部分は、サンタとクジラの取り合わせでしょう。
山積みのプレゼントを乗せた、大きなクジラにちょこんと乗るサンタ。
一度見たら忘れられないインパクトです。
しかも、なんだか似合っているから不思議です。
そんな2人が世界の海を股にかけ、巡っていく姿は悠々としていて壮大です。
きっとどのクリスマス絵本よりも、世界中を周ってプレゼントを届けている気分になるのではないでしょうか。
そんな幻想的な姿ですが、所々出てくる現実味がよいスパイスになっています。
プレゼントを運び込むのは手作業で、みんなで列を作って運んできたり、
山積みのプレゼントは重いので、全部積み込むころにはクジラの体がだいぶ海に沈んでいたり、
港ではそこの作業員の人たちが機械で積み荷を降ろしてくれ、税関職員まで出てきます。
この現実味が物語によい具合に説得力を与えてくれ、没入感を増してくれるのです。
さて、世界中を周ってプレゼントを配りに行くのですが、残されたものが一個だけ・・・。
この遊び心が素敵なところだと思います。
あれだけ山積みにプレゼントを乗せたのに、一個だけ来年に回されてしまったプレゼント。
子どもたち、このプレゼントの行方が気になってしょうがありません。
「誰のプレゼントなんだろう・・・?」
と、心配でたまりません。
特にクリスマスを目の前にして、プレゼントを楽しみにしている子には死活問題です。
きっと、残す場面がなくてもよかったのに、一個残した素敵な遊び心。
しっかりと子どもに届いていました。
「サンタにはトナカイ」という当たり前を、「サンタにクジラもかっこいいな」と思わせてくれる。
ロマンに満ち溢れた新たな提案をしてくれるクリスマス絵本です。
コメント