文・絵:長新太 出版:文研出版
頭がキャベツの男の子キャベツくん。
キャベツくんを食べようとするブタヤマさん。
二人のゆる~いやり取りが癖になる絵本です。
あらすじ
キャベツの男の子キャベツくんが道を歩いてくると、ブタのブタヤマさんに会いました。
キャベツくんが挨拶すると、ブタヤマさんは「お腹が空いてフラフラだから、お前を食べる」と言い出しました。
ブタヤマさんに掴まったキャベツくんは「ぼくを食べるとキャベツになるよ!」と言います。
ブタヤマさんは空を見てびっくり。
そこには鼻がキャベツになっているブタヤマさんが浮いていたのです。
キャベツくんは「ぼくを食べるとこうなる」と言いました。
すると、ブタヤマさんは「じゃあ、ヘビが食べたら?」と聞きました。
キャベツくんが「こうなる!」と言うと、体にキャベツが三つ刺さった、お団子のようなヘビが空に浮かんでいました。
ブタヤマさんはさらに聞きます。
「じゃあ、タヌキが食べたら?」
空にはお腹がキャベツになっているタヌキが。
「じゃあ、ゴリラが食べたら?」
今度は体がキャベツになったゴリラ。
気になったブタヤマさんはカエル、ライオン、ゾウと次々とキャベツくんに聞いていきます。
このままキャベツくんは、ブタヤマさんに食べるのを思いとどまらせることが出来るのでしょうか?
『キャベツくん』の素敵なところ
- キャベツになっちゃう部分が思っていたのと違う
- 最初から最後までゆる~くのんびりした空気
- ブタヤマさんの豊富なリアクション
この絵本ではキャベツになっちゃった生き物がたくさん出てきます。
しかし、そのどれもが「そこがキャベツ!?」と思わず言いたくなるものばかり。
キャベツの使い方も予想の斜め上を行き続けます。
ヘビは細い要素を捨てて串団子みたいになる上、キャベツを三玉並べるというまさかの使い方。
タヌキはお腹の白い部分だけキャベツという、なんとも言えない姿。
と言ったように、「こんな感じ?」と想像していたのとだいぶ違う、どれもキャベツが前面に出過ぎた先鋭的なデザインをしているのです。
これには子どもたちも「えー!?そこがキャベツ!?」と、ブタヤマさんばりのいいリアクションをしてくれます。
キャベツくんが「こうなる!」と言うたび、ワクワクが止まりません。
さて、予想外のキャベツ化がされていくこの絵本ですが、その空気感はゆる~くのんびりしています。
ゆる~い雰囲気で始まり、その雰囲気のままキャベツくんを食べようとするブタヤマさん。
その理由はシンプル。
「お腹が空いていて、目の前にキャベツがあったから」
子どもたちは「ひどい!」「かわいそう!」と言いますが、絵本の中ではどこ吹く風。
そこで咎められたり、お仕置きされたりすることはありません。
ただ「ぼくを食べるとキャベツになるよ!」と言われるだけ。
そのまままったり色んな生き物がキャベツになった姿を見ていきます。
それはまるで空を流れる雲を見ているような空気感。
そして、最後もこのゆる~くのんびりした空気感で終わります。
そんなのんびりした空気に、よいスパイスを与えてくれるのがブタヤマさん。
空に生き物が出てくるたび「ブキャッ!」とびっくりしてしまいます。
そのリアクションも、帽子が飛んで行ったり、倒れたり、山から転げ落ちたりとバリエーション豊富。
往年のリアクション芸人並みです。
不思議な生き物が現れて「ブキャッ!」の流れが、繰り返しで淡々と進んでいく物語に刺激を与えてくれ、ゆる~い空気感を続けつつ飽きさせないという、絶妙なバランスになっているのです。
独特の空気感と、独特の感性の中で繰り広げられるキャベツくんとブタヤマさんのやり取り。
そのゆる~くのんびりとしたやり取りや世界観が癖になるナンセンス絵本です。
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