作:大塚健太 絵:高畠純 出版:KADOKAWA
周りの目を気にしてフンを転がすのをやめたフンコロガシ。
名前も「フンころがさず」に変えて心機一転!
でも、なんだか・・・なんだか・・・う~ん・・・。
あらすじ
フンを転がすのが大好きなフンコロガシ。
でも、ある日、フンを転がすのを見て、みんなが「変な奴だ」と言ってきた。
フンコロガシは怒って、フンを転がすのをやめると言い出した。
転がさずに引きずり「フンひきずり」。
持ち上げて「フンもちあげ」。
坂道で追いかけ「フンおいかけ」。
色々試してみたけれど、どれもしっくりこない。
そして、気付いた。
フンを転がさないんだから「フンころがさずでいこう」と。
そうと決めたら、清々しい気分になった。
フンに縛られず自由になった気がした。
・・・でも、毎日がなんだかつまらない。
そんな時、キツツキに会った。
キツツキにフンを転がすのをやめた話をすると、キツツキは言った。
「変な奴だな」と。
変な奴と言われ怒る「フンころがさず」にキツツキは続けた。
「ぼくは木をつつくからぼくなんだ。君だって、フンを転がすから君なんじゃないか」と。
「フンころがさず」はそれを聞いて考えた。
「フンころがさず」はどんな結論を導き出すのでしょうか。
『フンころがさず』の素敵なところ
- 「フンコロガシ」を使った言葉遊び
- キツツキのわかりやすいのに鋭く深い言葉
- 愛くるしいフンコロガシ
フンを転がすから「フンコロガシ」。
じゃあ、フンを転がさなくなったら「フンコロガシじゃない」。
そんなまさかの発想が絵本になったのがこのお話です。
そこではフンの転がし方によって、色々な名前が出てきます。
フンもぐり、フンまわし、フンみがき・・・などなど。
フンコロガシの可愛いイラスト付きで、色々な名前を考えます。
この言葉遊びが子どもに大うけ。
真剣に考えるフンコロガシとは裏腹に、子どもたちは新しい名前が出てくるたび大笑い。
そして、その集大成がフンと決別する「フンころがさず」。
子どもたちも「フンなくなっちゃったよ!」と笑いが驚きへと変わります。
でも、自由になったはずなのに毎日が灰色でつまらない。
そんな時にキツツキと出会います。
そこでのキツツキのなんとなしの一言が、とてもわかりやすいのに物凄く深く、本質を貫いているのです。
それは「君は、フンを転がしているから君なんじゃないか」というもの。
これは人目を気にしてしまう人ほど刺さる言葉なのではないでしょうか。
やりたいことを我慢したり、隠したり。
そして気付けば自分自身を見失っている。
心は満たされずにモヤモヤ。
そんな気持ちに見事に突き刺さるのです。
「変な奴」と言われようと「好きなものは好き」という勇気。
それをやり続ける満足感。
そんなことに気付かせてくれるのです。
また、フンコロガシのわかりやすく愛くるしい喜怒哀楽も、大切な要素だと思います。
「変な奴」と言われ怒るフンコロガシ。
真剣に新しい生き方を考えるフンコロガシ。
「フンころがさず」になった後の、清々しさと灰色のつまらなさ。
フンとの再会を果たした時の様子。
その全てが愛くるしく、好きなことを好きだと認め、胸を張ってやる満足感を伝えてくれているのです。
このフンコロガシの様子と、キツツキの言葉が合わさってわかりやすくも深いものになっているのだと思います。
人目を気にせず「好きなものは好き」と言う勇気。
この当たり前だけれど忘れがちなことを伝えてくれる絵本です。
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