作・絵:宮西達也 出版:教育画劇
絵本の中の時代劇。
そして、子どもの大好きなカブトムシと侍が組み合わさっては盛り上がること間違いなし。
時代劇のお約束をしっかり取り入れつつ、子どもも大人も楽しめる絵本です。
あらすじ
むかしむかしのお話です。
ある村にわがままで暴れん坊のカブトムシ四十郎がおりました。
いつも通り弱いものいじめをしていると、そこにヘラクレスオオカブトが現れました。
その名もヘラクレス・キッド。
「一緒にもっといっぱい暴れてやろう」と誘ってきます。
それに乗った四十郎。
コガネムシたちの蜜を奪ったりと暴れまわります。
そんな四十郎に家族は父の三十郎は立派だったと言ってきます。
それに反発する四十郎。
一人泣いていると、幼馴染のこなつが声をかけ慰めてくれました。
しかしその時、ヘラクレスキッドが現れこなつに手を出そうとしてきます。
それを止めようとした四十郎にキッドがピストルを撃ちました。
その弾は四十郎をかばって前に出た伝八じいさんの胸に。
伝八じいさんとお父さんを馬鹿にしながら飛んでいくキッド。
四十郎はキッドを倒すと誓いました。
父の刀と三度笠を受け取って、キッドのいるウェスタン村へと急ぐ四十郎。
勝負の行方は一体・・・。
『かぶと四十郎』の素敵なところ
- カブトムシ・刀・ピストル・必殺技と男の子の好きが詰まっている
- 時代劇調の言い回しと雰囲気
- 所々に見せる子どもの発想
戦いごっこを始める時期の男の子が好きなものを全部詰め込んでいるこの絵本。
虫好きも、ヒーロー好きもテンションが上がってしまいます。
必殺技も出てきます。
「いなずまつのおとし」「かぶとたつまきけん」とわかりやすくかっこいい。
思わず叫びたくなってしまいます。
でも、それだけでなく話の構成自体が先が気になる展開の数々で、この要素に興味がなくても最後まで前のめりに見てしまう魅力があります。
それをさらに魅力的にしているのが、時代劇調の言い回しです。
場面の端々に時代劇の雰囲気を織り交ぜることで場面にメリハリを持たせたり、気分を盛り上げてくれます。
他の絵本にはない独特の雰囲気です。
話の内容はシリアスな流れなのですが、所々に見せる発想が子ども的なのも素敵なところ。
キッドへのピストル対策や、勝負の後の対応など、単純で直感的です。
でも、それが子どもの共感を呼びさらに展開を盛り上げてくれています。
時代劇と絵本とシリアスと見やすさのバランスが抜群の絵本です。
『かぶと四十郎』のおすすめの読み方
- キッドはジャイアンのように
- 必殺技は全力で
- 最後の終わりの口上は時代劇のナレーション風に
このお話はキッドの傍若無人さが大事です。
暴れん坊で強大であるほど、最後の勝負が盛り上がります。
傍若無人なジャイアンをイメージして読むとしっくりくると思います。
でも、エセ英語は忘れずに。
そして、必殺技は一番の盛り上げどころです。
そこで舞台が繰り広げられているような臨場感で全力で技を決めましょう。
最後は物語の一番最後にある、おしまいの口上です。
これをリズムよく時代劇のナレーションのように読んで終わることで、時代劇っぽさが大きく増し、粋に読み終えることが出来ます。
読んでみると、独特で魅力的な雰囲気を感じられると思います。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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