作:田中清代 出版:ビリケン出版
いつもと雰囲気が違う夜中のトイレ。
怖くてトイレに行けないとおねしょをしてしまいます。
そんな時、勇気をくれたのは小さなオバケの人形でした。
あらすじ
小学生の女の子ことこちゃんは、学校からの帰り道でした。
ことこちゃんは、家のベランダに今朝したおねしょのシーツが干してあるのを見て、しょんぼりしてしまいます。
うつむいて歩いていると、草むらに落ちている白っぽいものが目に入り、「おばけ!」と驚きました。
でも、よく見ると、それは布で出来たオバケの人形でした。
泥で薄汚れてしまっています。
ことこちゃんは人形を持って帰り、きれいに洗ってシーツの横に干しました。
どろんこだったから、「どろん」と名前もつけました。
しかし、オバケを見ていると、おばあちゃんが以前言っていたことを思い出してしまいます。
それは「怖がりの所にオバケはやってくる。おねしょのシーツを目印にして、空いている窓から入ってきて、子どもを驚かして食べてしまうんだ。でも、明るくなったら逃げ出してしまうし、怖がらなければやってこない」というものでした。
そんなことを思い出しながらも、どろんを見ていると「かわいいオバケもいるのかしら」と思えてくるのでした。
それからはことこちゃんがなにをするにもどろんと一緒でした。
どろんと過ごし始めてしばらく経ったある晩。
ことこちゃんは真夜中に目が覚めました。
おしっこがしたくなったのです。
我慢して眠ってしまおうかと思いましたが、どろんを見て思い直しました。
ことこちゃんは勇気を出し、トイレに向かいます。
そして、トイレの前に来た時に、あることを思い出しぞ―っとしました。
いつもトイレの窓を暗くなる前に閉めているのに、朝になると少し開いているのです。
ことこちゃんは「お母さんが開けているにきまってる」と勇気を出しました。
しかし、トイレのドアが勝手に開いていったのです。
その中には、本当にオバケが潜んでいました・・・。
『おばけがこわいことこちゃん』の素敵なところ
- ことこちゃんのとても細かくリアルな心理描写
- ずっとことこちゃんについているかわいいオバケたち
- 本当にいるトイレのオバケ
この絵本ではことこちゃんの気持ちや思いが、とても細かく丁寧に描かれています。
おねしょをして憂鬱な気持ち。
オバケを怖がる気持ち。
どろんと過ごしていくうちに、オバケへの見方が少しずつ変わっていく様子。
など、真夜中のトイレに挑戦するまでの、心の動きから丁寧に描かれているのです。
特に、トイレに行く場面では、勇気の奮い立たせ方などとてもリアル。
自分に言い聞かせながら、トイレに向かっていくのです。
そして、このことこちゃんの心理描写はそのまま、絵本を見ている子の心理描写でもあるのです。
「水の音怖いんだよね~」「私も人形ぎゅーってすると勇気が出るよ!」など、共感の声がとても多いのも、きっとこのためだと思います。
トイレやオバケが怖い子は、特に自分とことこちゃを重ね合わせるのでしょう。
そんなことこちゃんには、自分では気づいていない、どろん以外のオバケがついて来ています。
どろんを拾った時から、ことこちゃんの周りにいる二人のかわいいオバケたち。
一緒に絵本を見たり、部屋の中を飛び回ったりと楽しそう。
でも、知っているのは絵本を見ている子たちだけ。
ことこちゃんはオバケを怖がっているのに、いつも近くにオバケがいるという不思議な状況もこの絵本の魅力です。
子どもたちも「オバケこっちにもいるよ!」「ついて来てるよ!」と言うのですが、徐々に気が付きます。
「ことこちゃん、見えてないのかな」と。
オバケを怖がることこちゃんを見て、「オバケ近くにいるのに・・・」と不満そうだったり、やきもきしたり忙しい子どもたち。
独特の面白さがあります。
さて、いよいよ勇気を出して真夜中のトイレへ。
色んな不安が頭をよぎりますが、なんとか振り払いたどり着きます。
しかし、まさかの展開が待っていたのです。
おばあちゃんがいっていたオバケが本当にいるではありませんか。
まさかの展開に子どもたちもびっくり。
「本当にオバケがいた!」「おばあちゃんの話本当だったの!?」とプチパニック。
そこからのハラハラドキドキの展開に釘付けです。
真夜中のトイレに行く勇気だけでなく、そこまでの心の動きまで丁寧に描かれている。
ことこちゃんと同じで、トイレやオバケが怖い子へ共感と勇気をくれる絵本です。
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