文・絵:イザベル・シムレール 訳:石津ちひろ 出版:岩波書店
人のいなくなった夜の博物館。
そこでの主役は人ではなく展示されているものたちに逆転する。
夜の博物館の秘密をこっそりのぞける絵本です。
あらすじ
夜の誰もいなくなった博物館。
昆虫がが展示された部屋では蝶が羽を震わせ始めていました。
黄色い一匹の蝶が廊下へ飛び出していき、そのまま恐竜の化石が展示されている部屋へ。
恐竜の背中を撫でてどこかへ消えていきました。
いつの間にか他の蝶たちも廊下に飛び出し我が物顔で飛び始めています。
動物のはく製の部屋に辿り着いた蝶たちはひとりひとりに「早く起きて!」と呼びかけます。
やがてどの動物も目を覚まし、いっせいに動き出しました。
動物だけでなく、化石や、昔の電話などの道具たち、仮面に仏像まで。
色んな時代の、色んな地域から集まったものたちが、夢のようなひと時を過ごします。
そんな時間も朝日とともに終わります。
自分の部屋に戻らなければ・・・。
『はくぶつかんのよる』の素敵なところ
- 本物の図鑑や博物館の展示のような精巧な絵で展示室が描かれている
- 図鑑にも負けない出てくる展示品の種類の多さ
- それらが年代、種別を超えて共存する様子がまさに夢のひと時
この絵本を見てまず思うのはその絵の精巧さでしょう。
展示室をめぐっていくのですが、一つの展示室を見開き1ページ使って描きます。
そこにはまるで本物の展示かと思うほどきれいに描かれた展示品たちがびっしり描き込まれています。
その一つ一つに名称まで描き込まれていて、図鑑を見ているのかと思うほどです。
それが化石、昆虫、動物、道具と続いていくので、描かれる種類の多さが物凄いのです。
でも、精巧なリアルなだけでなく、どこか幻想的な雰囲気も漂わせています。
その雰囲気が、色々な年代の色々なものが混ざり合って過ごす空間を幻想的な夢のひと時にしてくれています。
恐竜の化石が歩き回る中、エイやマンタが宙を飛び、その中でライオンが遠吠えしている。
文章で書くとごった煮のようですが、それがまとまりを持ち夢のように描かれているのです。
特に夜明けの場面は息をのむほど綺麗で荘厳です。
ぜひ、夢のようなひと時を味わってみてください。
『はくぶつかんのよる』のおすすめの読み方
- 雰囲気を壊さないよう落ち着いた雰囲気で読む
- ゆっくりと絵を見つつ、子どもと対話しながら読んでいく
この絵本はみんな出てきて大騒ぎになるかと思いきや、夜の静かで落ち着いた雰囲気を持ち続けています。
なので、終始落ち着いたトーンで読んでいきましょう。
好きな動物がや恐竜、昆虫が出てきて声を上げる子もいるでしょう。
そんな時にもゆっくり絵を見せ、対話しつつもオーバーにリアクションを取り過ぎたりせず、
落ち着いた調子で「ほんとだ、ここにいるね。○○してるね」と、雰囲気や空気感を壊してしまわないようにしましょう。
読むと博物館に行きたくなる絵本。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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