作:中野真典 出版:講談社
楽しい夢、怖い夢、悲しい夢・・・。
言葉ではうまく言い表せない不思議な夢の世界。
そんな夢の世界を味わえる、まるで夢を見ているような絵本です。
あらすじ
眠りに沈む女の子。
わたしのみるゆめ。
雨粒が一粒一粒降って来て、カタツムリに乗ってお散歩する夢。
わたしのみるゆめ。
暗い森の中で、檻の中にいるわたし。その周りにはなにかいる・・・。
わたしのみるゆめ。
綿毛がたくさん飛んでくる。わたしも綿毛の自転車で一緒に空を散歩する。
とけていく。わたしのみるゆめ。
流れてく。どこまでもどこまでも・・・。
『ゆめ』の素敵なところ
- 楽しい夢、不気味な夢、温かい夢、色々な夢を体験できる
- 感覚的な夢の世界を見事なまでに表現している
- 読んでいると楽しく、静かに夢に誘われていく
この絵本では、言葉にしたり表現するのが中々難しい夢の世界を体験できます。
まるで「わたし」になったみたいに、その世界に入り込んでいくのです。
そこでは夢ならではの楽しい世界や、現実では出来ないようなことが出来てしまいます。
例えば、雨の中カタツムリの背中に乗ったり、車輪が綿毛になった自転車で空を走ったり。
でも、不気味な怖い夢を見ることもあります。
暗い森の中で自分は檻の中。
周りには黒い得体のしれない動物のような何かの影と「うおーん」という鳴き声。
楽しい夢だけはないのが、より夢らしさを感じさせてくれるのです。
さて、それらの夢ですが、これが見事に表現されているのが本当に素敵なところ。
絵、色合い、そしてほんの少しの言葉。
これらによって、夢独特の浮遊感や、非現実感など夢の独特な性質を表現しているのです。
見ていると、ふわっとした感覚になるのは、まさに夢を見ている感覚に近いのだと思います。
子どもたちも「こんな夢見たことある!」という声が出るなど、本当の夢に近い感覚のよう。
そして、訪れる夢の終わり。
あれだけ存在感のあった夢が、幻のように溶けていきます。
静かに静かに溶けていき、やがて静かな寝息へと繋がっていく・・・。
まるで、本当の夢の終わりのようです。
これは絵本の中の女の子だけでなく、見ている子も眠りに誘っていきます。
見終わると、夢が溶けていくように、自分も溶けていくような感覚になるのです。
色々な夢を本当に見ているように体験出来る。
気付けば夢と一緒に自分自身も溶けていく・・・、夢のような絵本です。
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