作:平田利之 出版:あかね書房
ある日不思議な矢印が現れた。
矢印に従い歩いていくと、目的地とは違う場所。
でも、大丈夫!
矢印が色んなものに変身して助けてくれるから。
あらすじ
ある天気のいい日。
女の子はかごを持って、野原にお花を摘みに出かけた。
しばらく行くと、「のはら」と書いた矢印があった。
女の子は矢印の方へ行ってみることにした。
すると、矢印もついてきた。
でも、着いたところは海。
しかも、うちの近くに海はないはずなのに。
ついてきた矢印が船になって女の子を乗せてくれた。
かわいい魚も泳いでいる。
と思っていたら、魚が鳥になって飛んでいく。
矢印の船は、いつの間にか雲の上にいた。
矢印はくるりと宙返りすると鳥になる。
でも、その拍子に女の子はかごを落としてしまった。
さらに雨がザーザー降ってきた。
矢印が傘になりふわふわと舞い降りていく。
降りていくと、段々雨がお花になって、そこは向かっていた野原になった。
矢印はかごになって、一緒にお花を摘んでいく。
しかし、急に矢印が前を向いた。
そこにはなにやら黒くて丸いものが二つ。
これは一体何でしょう?
『やじるし』の素敵なところ
- 次々に変身していく矢印
- 次々と切り替わっていく少しずつ繋がったロケーション
- 夢か現実か・・・、なんだか不思議な最後
この絵本の一番の魅力は、場面に応じて変身する不思議な矢印だと思います。
回転したり、折れ曲がったりしながら、場面に応じて色々なものに変身する矢印。
船、鳥、傘、かごなど、たくさん変身しますが、しっかり矢印の原型があるのが面白い。
見立てることで、なんにでも変身することが出来るのです。
子どもたちも、
「折り紙みたい!」
「絶対、傘になるよ!」
と、大盛り上がり。
特に最後の変身では「えー!?」と度肝を抜かれていました。
また、鼻が矢印になっているのですが、それが常に進行方向を指し示しているのも地味に面白いところです。
傘になった時などは、矢印の体は上を向いているのですが、鼻の矢印は降りていく下を差していたりします。
矢印ゆえの、方向へのこだわりを感じずにはいられません。
変わっていくのは矢印だけではありません。
場面もどんどん変化していきます。
船で海の上にいたと思ったら、空へ。
さらに雨。
そして野原に到着。
といった具合に、どんどん場面が切り替わっていきます。
前のページのものが、少しずつ繋がっているのも面白いところ。
海の魚が鳥になって飛んでいくと、そこは空になってしまう。
矢印が鳥になってかごを落としたところでは、右上にすでに黒雲が少しお目見え。
それが空を覆って、大雨になるのです。
その大雨の線が少しずつ花に変わり、目的地の野原へ到着。
この少しずつ繋がっている感覚が面白く、場面転換を自然なものにもしてくれているのです。
さて、この大冒険の最後は少し不思議な終わり方をします。
変わった矢印との時間は、現実だったのか夢だったのか・・・。
どちらとも取れる物語の終わりに、子どもたちからも色々な意見が出ます。
「きっと、眠っちゃってたんだね」
「でも、○○があるよ・・・」
「そっか~」
とイメージを膨らませて話していました。
一本の矢印を巡る海へ空への大冒険。
次々と切り替わっていく、矢印の姿と場面の変化がとっても面白い絵本です。
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