作:京極夏彦 絵:町田尚子 編:東雅夫 出版:岩崎書店
無害と思われがちな妖怪小豆とぎ。
でも、恐ろしい一面もあったのです。
小豆をとぐあの音が聞こえてくると・・・。
あらすじ
夏休みになったので、男の子は一人でおじいちゃんの家に来た。
夏休みの間、この田舎で暮らすのだ。
草木や虫、山、そして川がある。
おじいちゃんの家に来てから変な音が聞こえる。
しょきしょきしょきという音。
ある日、川を見に行った。
その晩、川を見に行ったことをおじいちゃんに話した。
魚はいるけれど、危ないから入ってはいけないと言う。
そこで「しょきしょきしょき」という変な音を聞いたことも話してみた。
おじいちゃんは「あずきとぎ」というオバケだと言った。
でも、男の子は信じなかった。
川が危ないから、そんな迷信があるのだと。
翌日、男の子は川に遊びに行った。
『あずきとぎ』の素敵なところ
- 音という得体のしれない怖さ
- 物静かで徐々に怖さを引き上げていく雰囲気づくり
- そこにいるかのようなリアル過ぎる絵
この絵本にオバケの姿は出てきません。
出てくるのは「しょきしょきしょき」という、小豆をとぐ音だけです。
だからこそ、ぞくっとする怖さがあるのです。
どこから聞こえてくるのかわからない。
でも、確実に聞こえてくる音。
それがおじいちゃんの話と合わさって、より怖さを増していきます。
姿が見えないからこその、どこにいるのか、どんな姿なのかわからず、想像してしまう怖さ。
そんな静かな怖さがこの絵本には詰まっています。
それにはこの絵本全体の雰囲気作りも大きく影響していると思います。
言葉少なに語られる、田舎の環境。
そこでは絵を見ながら、自分で情報を拾っていきます。
風光明媚な田舎の美しさ。
それとは対照的な謎の音。
このアンバランスさで物静かな不気味さや怖さを感じます。
そして、徐々に怖さを引き上げていくのがおじいちゃんとの会話です。
あずきとぎを当たり前のもののように話すおじいちゃん。
嫌でも「いる」ことが伝わってきます。
そこからの最後の場面。
怖さは一気に引き上げられるのです・・・。
さて、この怖さには視覚も大きく関わっています。
それが、とてもリアルに描かれた絵です。
田舎の自然や、虫、犬、人物、そして川。
見ているだけで、汗ばんで、セミの声が聞こえてきそうな風景です。
おじいちゃんの家での食事風景や、日本家屋ならではの少し薄暗い感じもリアルに表現されています。
まるで、本当に自分がそこにいるかのようなリアルさ。
だからこそ、あずきとぎを身近に感じてしまい、本当に後ろにいるような気分にさせてくれるのです。
あずきとぎの別の顔を見ることが出来る。
雰囲気と音を最大限に活かした、日本の怪談ならではの怖さがたっぷり詰まった絵本です。
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