トゲトゲくんはね、(3歳~)

絵本

文:クォン・ジャギョン 絵:ハワン 訳:いくたみほ 出版:パイインターナショナル

怒ること。

それはとても大切なこと。

でも、怒ることしか知らないと、一体どうなってしまうでしょう。

心のトゲが大きくなって・・・。

あらすじ

体中にトゲを生やした男の子がいた。

男の子の口からは怒りの言葉と一緒に、トゲがビュンビュンと飛ぶ。

毎日、色んなことに怒っていると、トゲもどんどん大きくなった。

誰にでもトゲはあるけど、男の子は誰よりも大きくて鋭いトゲにしようとした。

みんなが怖がって、誰からも手を出されないために。

でも、それだと誰も男の子としゃべろうとしない。

男の子から近づくことも出来ない。

一人ぼっちになってしまう・・・。

『トゲトゲくんはね、』の素敵なところ

  • 怒りがトゲを通すことで、物凄くわかりやすく描かれている
  • 自分の心のトゲに気付かせてくれる
  • 怒り以外の表現の大切さにも気付かせてくれる

普段自然に湧く怒りの感情。

それは無意識に使われることが多いのではないでしょうか?

この絵本では、その怒りをトゲで描き、可視化しています。

だからこそ、物凄くわかりやすく、子どもにもしっかり伝わるのです。

人それぞれの、色々な形のトゲ。

日々怒り続けることで、育っていくトゲ。

普段見ることが出来ない怒りの動きや成長が、トゲを通して一目でわかってしまいます。

トゲが育ちきった未来まで・・・。

でも、この絵本の一番素敵なところは、このトゲを自分事として考えられるところです。

トゲトゲくんの怒りには、どこかしらに自分と重なる部分があります。

友だちに強い言葉を使ったり、力で支配しようとしたり。

そんな姿を見た時に、自分もトゲを伸ばしたり、飛ばしていたことに気付きます。

自分のトゲと怒りの心を直視することになるのです。

では、このトゲをどうしたらいいのか。

絵本の最後にその一つの答えが描かれます。

それは怒り以外の、気持ちの表し方でした。

怒りしか表現の仕方を知らなければ、トゲはどんどん大きくなってしまいます。

しかし、怒り以外にも気持ちは表現できるのです。

そんなことをトゲトゲくんの決断は伝えてくれます。

この絵本を読み終えた時、子どもたちにとても静かな考える時間が生まれました。

「ぼくもトゲを飛ばしてたかも」

「私はこんな時トゲトゲになっちゃう」

そんな風に、ワーワーとした主張ではなく、自分の心を見つめるような静かな感想。

しっかりと、子どもに心のトゲが伝わっていることを感じたのです。

普段当たり前のように出してしまう目に見えない怒り。

その怒りを見えるようにしたことで、自分の心と向き合う機会をくれる絵本です。

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