文:山下洋輔 絵:長新太 出版:福音館書店
怒った時に鳴らす心の太鼓。
ドン、ドンドコドン、ドンシャカドン!
色んな音の怒りの太鼓を鳴らし続けていると・・・。
あらすじ
鬼の子ドンはいたずら者。
イタズラしすぎて、ついに家を追い出されてしまった。
人間の子こうちゃんもいたずら者。
こうちゃんもイタズラしすぎて、家を追い出されてしまった。
ぶらぶら歩いているこうちゃんの上へ、ドンが空から降ってきた。
こうちゃんはびっくりして「何だよお前」と言うと、太鼓を「ドン!」と叩きました。
ドンも負けじと「鬼の子だよ。お前は何だよ」と言い返し「ドン!ドン!」と太鼓を叩きます。
こうちゃんも「人間の子だよ」と太鼓を叩き返します。
さらにドンが太鼓を叩いていると、こうちゃんのお父さんとお母さんが駆けつけました。
「こうちゃんになにをするの」と、二人も太鼓を鳴らします。
するとドンのお父さんとお母さんもやってきました。
「ドンちゃんに何をするんだ」と、太鼓を鳴らして走ってきます。
それを見て、こうちゃんの犬と猫も応援に駆けつけました。
さらにそれを見て、ドンのニワトリとウシも出てきます。
人間の世界からも、鬼の世界からもみんな集まってきて、太鼓を打ち鳴らす大騒ぎになりました。
みんな勝手に太鼓を鳴らしていたその時・・・。
『ドオン!』の素敵なところ
- みんな持ってる心の太鼓
- どんどんみんなが集まってくるわちゃわちゃ感
- 太鼓ならではの気持ちのいい結末
この絵本では怒りが太鼓で表されています。
普通だったら相手をドンと押すところで、ドン!と太鼓を鳴らします。
怒りが激しくなると、太鼓も激しくなっていきます。
これが物凄くわかりやすく、それぞれの怒りを伝えてくれるのです。
あまりに自然過ぎて、「なんでみんな太鼓を持っているんだろう」という疑問が湧かないほど。
きっと怒りのイメージが太鼓の音にピッタリだからでしょう。
最初はどんどん激しくなっていく太鼓の打ち合いに、心配になっていく子どもたち。
お父さんお母さんまで出てきて、「大変なことになったぞ」というハラハラとした空気感が広がります。
でも、犬や猫が駆けつけてきた辺りから、空気感が変わっていきます。
どんどん駆けつけてくる動物や人たちになんだか笑ってしまうのです。
「犬と猫も来ちゃったの!?」
「どんどん来るじゃん!」
と、もうなにがなにやらわからないわちゃわちゃ感に、子どもたちは大爆笑。
もうお祭りのような空気感に変わります。
そんな中、突然まさかの出来事が起こります。
これには子どもたちも絵本の中のみんなもびっくり。
この結末が、心の太鼓ならではの、とても気持ちのいいものになっていて素敵です。
物凄いわちゃわちゃ感から、一気に爽やかな空気へ入れ替わる感覚がとっても面白いのです。
怒りとともに打ち鳴らされる心の太鼓。
その怒りが綺麗に気持ちよく収まってしまう絵本です。
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