作:京極夏彦 絵:山科理絵 編:東雅夫 出版:岩崎書店
仏間や、大きな木、古いお堂など・・・。
なんだか空気感の違う場所。
何かがいそうな気がする場所。
なにかいるの・・・?
あらすじ
お面を被った女の子が色々な場所を見て回っていく。
おばあちゃんの家の仏壇のある部屋。
神社の横の古いお堂。
お墓の奥にいっぱいあるお地蔵さん。
大きな大きな木。
古くて壊れた誰かの家。
家と家の細い隙間。
人のいない夕暮れ。
「なにかいますか?」と聞いてみる。
すると・・・。
『ことりぞ』の素敵なところ
- 何かがいそうなところへの本能的な怖さを感じられる
- 美しさと妙なリアルさが融合した絵
- ぞくぞくとする静かな怖さ
「なにかいそう・・・」
直感的にそう思ったことは誰にでもあるのではないでしょうか。
なんとなく通りたくない道。
一人では入りたくない部屋。
きっとそれぞれにあると思います。
そんなところへの本能的な、原初的な怖さが鮮明に蘇ってくるのがこの絵本です。
子どもたちも「こんなところ近くにある」「ここ怖いんだよね」と共感して、身近な場所を思い浮かべている様子でした。
これには無駄を全て削ぎ落したような文章と、その絵が大きな要因だと思います。
絵は女の子がお面を被っていたりすることもあり、どこか非現実的な雰囲気があります。
幻想的で日本画のような美しさがあり、見ているだけでも引き込まれそうになります。
しかし、妙にリアルなのです。
女の子が行く場所が物凄くリアルで、本当にそこに訪れているよう。
この幻想的と、現実的が融合していることで、より「なにかいそう」が際立っているのだと思います。
そして、この絵本の一番素敵なところはぞくぞくした怖さです。
悲鳴をあげるような怖さではありません。
ただ、淡々とした怖さがあります。
読み終わった時、みんなが静まり返り、しばらく声が出せない怖さ。
体の芯がぞくぞくとする怖さ。
それを思い切り味わえるのがこの絵本なのです。
「なんか怖い」と思う場所。
そこに焦点を当て、リアルに美しく、しっかりと怖く描かれた怪談絵本です。
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