絵と文:いのうえようすけ 出版:福音館書店
見る向きによって、なんだかいつもと違って見える。
そんな当たり前だけど、気付きにくい変化。
その面白さを、じっくりしっかり感じられる絵本です。
あらすじ
ゾウの前向きは鼻がぶらぶら。
ゾウの横向きは大きなお腹が見える。
ゾウの後ろ向きは尻尾がぶらりと垂れている。
ボンボン時計の前向きは振り子が動く。
時計の横向きは音だけ聞こえる。
時計の後ろ向きは金具が一つついている。
カエルの前向きはこんにちは。
カエルの横向きはこんばんは。
カエルの後ろ向きはお尻を見せて、どうもすいませんです。
電車の前向きは運転手さんが見える。
電車の横向きはお客さんと吊り輪が見える。
電車の後ろ向きは車掌さんも後ろ向き。
まだまだ、たくさんの前向き横向き後ろ向きが出てきます。
『まえむき よこむき うしろむき』の素敵なところ
- 見る向きによる違いの面白さ
- 飽きさせない言葉選びのセンス
- 身の回りのものにも試してみたくなる
この絵本は「見る向きによって見え方が違う」という当たり前のだけれど、見過ごされがちなことを改めて見せてくれる絵本です。
そこには発見がたくさんあります。
前からしか見えない所。
前からだと見えない所。
どこの向きから見てもおんなじ所。
などなど、たくさんの面白い発見が詰まっているのです。
しかも、出てくるのは見慣れたものばかり。
身近なものからの新鮮な発見は、より面白さを際立たせてくれます。
さらに、言葉選びのセンスも抜群です。
この言葉選びが、同じ流れでの繰り返しに笑いを生み、飽きさせず最後まで惹きつけているのだと感じます。
見え方を言っていたと思ったら、カエルでは挨拶になる。
どの方向から見ても丸いで統一する。
全部疑問形。
といったように、そのページによって、予想の少し斜め上を行く言葉選びと着眼点で飽きさせないのです。
さらに、出てくるものが身近だからか、読んだ後に身の回りのものを、色んな向きから見たくなるのも素敵なところです。
友だちの顔や、いつも遊んでいるおもちゃなどを見てみる子どもたち。
すると、「横からだとなくなっちゃったみたい」、「後ろからだと色が違う」など、いつもは目に入らない、向きによる見え方の違いが見えるようになるのです。
身近なものを色々な向きからじっくり見てみることで、向きによる違いの面白さという新しいものの見方に気付かせてくれる絵本です。
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