作:加藤休ミ 出版:晶文社
写真かと思うほど美味しそうでリアルな魚料理の数々。
でも、実はクレヨンで描かれているのです。
そんな普通の図鑑とはだいぶ違う、美味しい世界へようこそ。
あらすじ
サンマ、キンメダイ、マサバ、スルメイカ・・・。
どんな魚も料理になって出てきます。
説明文には、その魚のことではなく、料理のことが満載です。
図鑑の所々には、魚の一生、魚の生息地といった内容も載っています。
それらも、魚そのものではなく、魚料理としての一生や生息地になっています。
徹底して、魚料理について描かれた図鑑をぜひご覧ください。
『クレヨンで描いたおいしい魚図鑑』の素敵なところ
- クレヨンとは思えないほど美味しそうな魚料理
- 子どもは絵で、大人は絵と文で楽しめる
- 徹底した世界観作り
一目見ただけでは、クレヨン画だと信じられないほど、香ばしく、味がしみ込み、ぷりぷりとして美味しそうな魚料理たち。
「美味しそう」と同時に「どうやって描いてるの!?」という驚きも与えてくれます。
子どもたちも、顔を絵本に思い切り近づけ、本当にクレヨンで描いているのか確かめようとしているほど。
クレヨンでどう描いているのかが、最後に載っているのもおもしろいところです。
この絵本は絵だけでなく、その紹介文にも面白さがあります。
魚料理の紹介文はその料理を知っている大人が見ると、かなり楽しめます。
サンマの塩焼きでは「塩焼きになる前は、オホーツク海で成長するいたずらっ子でした。」
おでんのスケトウダラでは「関西では「クラスに一人はいる、悪い奴じゃないけど、面白くない」友だち的な感覚」
などなど、独特なセンスで、「そうそう!」と妙によくわかったり、「そうだったんだ!」と新しい発見があったり、見ていて飽きないものばかり。
子どもは絵を見て楽しみ、大人は文も読んでより楽しめる一冊になっています。
さらに、魚料理の図鑑として徹底的に世界観を作り込んでいるのもとても素敵なところです。
もう前文から気合が伝わってきます。
スナメリ舎という架空の編集社からの、海鮮ジョーク盛り沢山なお詫び文から始まるのですから。
図鑑ではよくある、生涯や生息地のコーナーももちろん掲載されています。
しかし、魚料理の生息地や、生まれてから魚料理になるまでの一生などになっていて、「魚料理」という生き物がいるかのように、徹底的に世界観を統一しているのです。
だからこそ、子どもだけでなく、大人も見ていて本気で楽しめるのでしょう。
美味しそうな絵、ユーモア溢れる文章、徹底した世界観。
これらが融合し、食欲も好奇心も物凄く刺激される摩訶不思議な絵本です。
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