タコやん(4歳~)

絵本

文:富安陽子 絵:南伸坊 出版:福音館書店

急にタコが家に来て「遊ぼう」と言ってきた。

タコと遊ぶのなんて乗り気がしない・・・。

でも、このタコは「すっげぇ」タコだったのです。

あらすじ

ある日、海からタコのタコやんがやってきた。

タコやんは、人間の男の子しょうちゃんの家に来ると、ドアをノックした。

しょうちゃんがチェーンをかけて、ドアをちょっぴり開いてみると、そこにはタコがいた。

そのタコは「タコやんです。遊びましょ」と言ってくる。

しょうちゃんはタコと遊ぶのは嫌だったので、「ゲームしてるからまた今度」と断りました。

すると、タコやんはぺちゃんこになって、ドアの隙間から入ってきて、ゲームをやらせてくれと言ってきます。

そして、勝手にゲームを始めてしまいました。

しかし、その上手い事。

タコやんはたちまちハイスコアをたたき出しました。

「タコやん、すっげぇ!」

しょうちゃんも大喜びです。

違う遊びをすることになり、しょうちゃんとタコやんは公園へ出かけていきました。

公園では友だちのゲンちゃんがサッカーをしていました。

サッカーに入れてもらおうとすると、しょうちゃんはいいけど、タコやんはダメだと言われてしまいます。

しょうちゃんはゲームが上手いことを伝え、サッカーだってきっと上手だから入れてくれないか聞きました。

すると、キーパーとして入れてくれることに。

そのゴールキーパーの上手い事。

どんなボールも止めてしまいます。

「タコやんすっげぇ!」

サッカーをしていたみんなは大喜びです。

それから、かくれんぼをすることになりました。

ですが、みんながかくれんぼをしていると、おじさんが大きな犬を連れて公園にやってきました。

さらに、公園で「犬を放すから、帰った帰った」と言ってきたのです。

タコやんと楽しく遊んでいたみんなは、公園から追い出されてしまうのでしょうか。

『タコやん』の素敵なところ

  • 物凄く素直な反応
  • タコの力をフルに発揮して信頼を勝ち取るタコやん
  • なんだか楽しい言葉選び

この絵本の登場人物たちは、みんな物凄く自分の心に素直です。

普通の絵本であれば、「あそびましょ」と尋ねてきたら、「いいよ」と物語が始まるでしょう。

でも、この絵本は違います。

「タコと遊ぶの嫌だな~」と断ります。

しっかりチェーンもかけておきます。

ただ、実際にタコが来たら、みんなこうするんじゃないだろうか・・・。

サッカーの時も同じです。

しょうちゃんはいいけど、タコはダメ。

きっと普通こう言います。

それぞれの反応がとってもシンプルで自分の心に正直なのです。

ただ、それはマイナス面だけではありません。

タコやんが出来ることを見せると「タコやん、すっげぇ!」と、偏見なく認めて仲間に入れてくれます。

そういう、子どもの純粋な素直さがこの絵本の大きな魅力だと思います。

また、タコやんもとっても魅力的。

断られても折れない心で、タコの能力をいかんなく発揮して、勝手に家に入ってきます。

しかし、タコやんのすごい所は、実力で「遊びたい!」と思わせるところ。

最初は困っていたしょうちゃんも、タコやんの実力を見て、「タコやん、すっげぇ!」と180度見方が変わります。

サッカーでも同じです。

タコとしての実力で、しっかりと地盤を固めていく強さ。

このすごさがタコやんの魅力なのでしょう。

さて、この絵本。

読んでいるだけで笑いが起こったり、楽しい気分になってきます。

それはなんだかおもしろい言葉がたくさん使われているからです。

一緒に言いたくなる「タコやん、すっげぇ!」

本当にタコがそこにいるような擬音「ヌルリンチョ」「ペタコラ」「ペタンチョ」

なんだかおもしろい「ちっちゃいおじさんとでっかい犬」

などなど、語感や雰囲気やノリなど、なんかおもしろくなっちゃう言葉が散りばめられていて、読んでいるとなんか楽しいのです。

「タコやん、すっげぇ!」と楽しそうに繰り返す子。

ヌルリンチョなど、タコやんが動くたびに笑っちゃう子。

「ちっちゃいおじさん!」と爆笑の子。

なんだか常に楽しい雰囲気なのです。

とっても素直な子どもとタコ友情を描く。

思わず「タコやん、すっげぇ!」と言いたくなってしまう絵本です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました