作:角野栄子 絵:垂石眞子 出版:福音館書店
憧れていた自動車修理の仕事。
ある日、特別に手伝わせてもらえることに。
その仕事で大切なのは車の声を聞くことでした。
あらすじ
ユウタくんは昼ごはんの後、帽子にだぶだぶのオーバーオールという格好で、お尻にタオルを下げて出かけました。
お母さんがどこに行くのか聞くと、「仕事に行くんだ」と言うユウタくん。
着いたのは、いつも見ていた自動車を直す工場でした。
そこではお兄さんが車の修理をしています。
修理をしていたお兄さんがユウタくんに気付きました。
ユウタくんが「仕事をしに来た」と伝えると、手伝わせてもらえることに。
お兄さんは「車って、叩くと返事をするんだ」と言いながら、ジャッキで上がった車の下をハンマーで叩きます。
なんて言っているかを聞かれ、ユウタくんは「泣いているみたい」と言いました。
お兄さんも同意して、足の付け根のネジを締めれば大丈夫なことを教えてくれました。
でも、足だけじゃなく、お尻の穴も外れそうだと、マフラーを示しました。
そこでユウタくんもお手伝い。
新しマフラーを運び、ぼろっきれを持ってきて、ホースを引っ張りお兄さんに渡します。
お兄さんは新しいマフラーを取り付け、足のネジも締めました。
そして、もう一度ハンマーで叩いてみることに。
今度はユウタくんがハンマーで叩きます。
すると、さっきとは違う音になっていました。
まるで笑っているみたいな音です。
次はタイヤを直すので、車を地面に降ろします。
降ろす時に扉が鳴る音を聞いて、ユウタくんは「嫌だって言ってるみたい」と言いました。
お兄さんも同意して、この車は高いところが好きみたいなんだと教えてくれました。
車を降ろすと、タイヤのネジを締めていきます。
ユウタくんも手伝って、ばってんになった器具の片方を持たせてくれました。
力いっぱい回してネジを締めていきます。
タイヤが終わると、今度はボンネットを開きエンジンを見ていきます。
ユウタくんは車を無事直すことが出来るのでしょうか。
『ぼくしごとにいくんだ』の素敵なところ
- 大人と同じように仕事が出来る嬉しさ
- 本当に直していっているような詳細な描写
- 車と向き合うプロの仕事の仕方
この絵本の一番素敵なところは、子どもながらに大人と同じように仕事をしていることでしょう。
普通なら断られるところを、特別に手伝わせてもらえる嬉しさ。
しかも、その内容も本格的で、実際に車を触り、大人と同じように仕事をします。
仕事だけでなく、しっかり大人と同等に扱われているのも嬉しいところ。
より仕事に身が入ります。
この特別に繋がったのが、毎日工場を見ていたり、仕事をするために服とタオルを用意した、ユウタくんの積み重ねのおかげというのも素敵なところです。
そんな仕事の内容はとってもリアル。
そのリアルさが子どもたちを、本当に自分たちも工場にいる感覚にしてくれます。
ます、絵はユウタくん目線で描かれ、車がとても大きく感じます。
下から見上げる車には、様々なパーツがしっかり描き込まれ、本当にそこに車があるようです。
次に音。
直す前にハンマーで叩く時は、「ぐああん ぐああん」だったのが、ネジを締めると「かかあん かかあん」という音に。
他にも、ホースから空気をかける時は「しゅびゅー」、タイヤのネジを締める時は「き、き、きゅっ」など、聞こえる音をそのまま文字にしたようなものばかり。
イメージがすぐに湧いてきて、自分が本当にやっている感覚になってきます。
さらに、マフラーをお尻の穴と言ったり、エンジンをお腹の中と言ったりと、説明が子どもにもわかりやすく描かれているのです。
これらが物凄い臨場感を作り出し、見ている子どもの表情は真剣そのもの。
ユウタくんと一緒に「喜んでるみたいだね」と車の声を聞く子もいるほどでした。
さて、そこではただ仕事をするだけでなく、プロの仕事に触れる機会にもなっています。
遠くから見ているだけではわからない、仕事への向き合い方や考え方。
それらに触れる機会は貴重です。
ただ直すのではなく、車の声に耳を傾け、その声を聞きながら車を元気にしていく。
そんなプロの仕事の仕方や、真剣な向き合い方は、純粋に「仕事ってすごい」「仕事ってかっこいい」という気持ちを抱かせてくれます。
そして、「仕事をしてみたい!」という、将来への希望に繋がっていくのです。
本物さながらの仕事風景や音。
とてもリアルな仕事体験を通して、仕事への憧れが膨らむ絵本です。
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