作:小風さち 絵:山本忠敬 出版:福音館書店
街中を走るかっこいい赤い自動車。
そんな自動車が出来るまでを、0から10までお見せします。
さあ、工場見学に出かけましょう。
あらすじ
朝、自動車工場のサイレンが鳴り、今日の仕事が始まります。
おじさんたちが配置に着くと、鉄のロールを載せた大型トラックが到着した。
その鉄のロールを切断し、プレス機に入れ型を作る。
屋根、ドア、床の形に。
それを溶接ロボットが、繋げて組み立てる。
ボディが出来た自動車は、ペンキを吹きつけられ、赤い車体になっていた。
ここでお昼休みの合図がなる。
みんな工場からいなくなり、続きは後で。
お昼休みが終わると、おじさんたちが帰ってきた。
ガラスをはめ、配線をつけていく。
エンジンを取り付け、変速機を接続。
メーターも全部あるし、ワイパーもついた。
でも、まだ走るための肝心なものがついていない。
赤い自動車の完成まであと少し・・・。
『たんじょうじどうしゃ』の素敵なところ
- 自動車の製造ラインを全て見られる
- 働く人の動きまでリアル
- マニアックなことや、見逃されがちなところまできちんと描かれる
この絵本のすごいところは、製造ラインを一から十まで全て見られることです。
ドアをつける、タイヤをはめるという次元ではありません。
最初は鉄の塊から始まるのですから。
屋根、ドア、床と、車体のパーツが出来るところから、ライトの取り付けやエンジンの積み込みまで、全てが細部まで描かれます。
窓をはめるところなどは、「レゴブロックみたいだね」と意外な取り付け方に、素直感想が出ていました。
しかも、切断機で切り出される様子や、プレス機で型取りされる様子、それが電動ハンガーで運ばれ溶接されるところなど、工場でのリアルな作業工程が見られるのです。
さながら、工場見学のよう。
車そのものよりも、工場全体に目線を向けた絵本は少ないように思います。
さらにこの工場要素を強めているのが、働くおじさんたちの存在です。
車が誕生する一番最初の工程は、おじさんたちが配置について、機械の準備をすること。
工場が稼働し始めた後も、その動きはもの凄くリアルです。
部品の重そうな様子、メーターの指差し確認など、細かな動作もしっかり描かれます。
極めつけはお昼休み。
絵本だと忘れがちですが、作っているのは休息や食事が必要な生きた人間なのです。
これがこの工場をよりリアルで、生きたものとして感じさせてくれています。
ここまでこだわって描かれているこの絵本。
やっぱり、マニアックな部分もありますし、作っただけでも終わりません。
まず驚くのが変速機。
エンジンを取り付けた後は、変速機を取り付けます。
しかも、変速機の拡大図まで載せてくれるマニアックさ。
これには車に詳しい子も、興味津々な様子。
「そうそう、そうやって作るんだよね」と言っていた子も黙り込み、真剣に説明を聞いていました。
さらに作っただけでは終わりません。
出来た後には、機器のチェックが待っています。
ライト、ブレーキ、クラクション・・・。
そして、テスト走行。
地味で端折られがちだけれど、とても大事な工程です。
ここまできっちり描いているのが、工場や働く人への敬意を感じる、とても素敵なところだと思っています。
車が誕生するまでを、リアル過ぎる絵で0から10まですべて見せてくれる。
本当に工場見学をしているような絵本です。
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