文:二宮由紀子 絵:高畠那生 出版:文研出版
誕生日プレゼントにキリンを貰った男の子。
かわいいけれど、どんどん大きくなるキリン。
そこには大きくなる嬉しさと、大きくなったからこその寂しさがありました。
あらすじ
ぼくの誕生日に、おばあちゃんが迷子の赤ん坊のキリンをくれた。
キリンにはウィリアムという名前を付けた。
家の中で育て、毎日寝るのも一緒だった。
でも、毎日大きくなっていき、頭が天井につっかえるようになると、ベランダに出されてしまった。
お父さんとお母さんは快適そうだけれど、ぼくはつまらない。
ウィリアムが大きくなり過ぎて、ぼくよりも一つ上の階に住んでいる女の子と仲良しみたいだから。
ウィリアムと遊べるのはご飯の時だけ。
その他の時は、ウィリアムの足を使って走り幅跳びの練習をしたり、ロープを張ってプロレスごっこをしたりする。
けど、ぼくは足よりも、頭を撫でる方が好きなんだ。
大きなキリンの頭を撫でる方法は・・・。
『だいすき、でも、ゆめみてる』の素敵なところ
- キリンを飼ったらそうなりそうな切ない葛藤
- お兄さんとしての成長
- かわいくて、夢のある解決策
この絵本の素敵なところは、「キリンを飼ったら、そんな風になりそう」という葛藤が、妙なリアルさで描かれるところです。
最初は寝るのも一緒だったキリン。
でも、大きくなってついにベランダに出されます。
ベランダに出された時の哀愁は、本当になんとも言えません・・・。
「清々しい表情のお父さん、お母さん」に対する、「つまらないぼく」のギャップも生活感を感じてリアルです。
でも、一番切ないのは頭の位置が高くなったことで、一階上の子と仲良くなってしまったこと。
飼い主の自分は足とばっかり遊んでいるのに、上の子は頭を撫でたりお話したり。
羨ましくないわけがありません。
プロレスごっこなどで、なんとかキリンの足と遊ぼうとする姿も健気です。
でもある日、一階上の子が、自分よりも小さくて、引っ越してきたばっかりだと知ることになります。
それを知った時、「面倒を見てやらなくっちゃ」と決意します。
キリンと仲良くしていても笑顔で見守ってあげる姿は、本当に優しくて素敵な子だなと感じさせてくれるのです。
だけど、やっぱりキリンの頭は撫でたいし、仲良くもしたい男の子。
毎晩寝る前にある願い事をしています。
その発想がとっても平和で、子どもらしく、かわいいのもこの絵本のとっても素敵なところです。
キリンを飼うことで起こる悩みがコミカルに、でも、妙にリアルに描かれる。
キリンを飼いたい人が読んでおいた方がいいかもしれない絵本です。
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