作:たなかひかる 出版:ポプラ社
パンツ一丁の謎の生き物ぱんつさん。
土から生まれ、それぞれ違うぱんつをはいています。
さあ、摩訶不思議でくせになる、ぱんつさんワールドが始まりますよ。
あらすじ
土の中からパンツ一丁のぱんつさんが、4人生まれた。
大きく伸びをして、首をこきこき、アキレス腱を伸ばしていると・・・。
一人が黄色い大きな手に掴まれた。
そして、そのまま栓抜きにされちゃった。
大きな黄色いぱんつさんが、栓を開けた飲み物を飲んでいると・・・。
緑の大きな手が、黄色いぱんつさんに縄をかけた。
そのまま縄をわっかにしてネックレス。
もう一人の緑のぱんつさんにプレゼントしてしまった。
そこへ今度はオレンジの大きな手が現れて、二人の頭をつまんで持ち上げた。
二人の緑のぱんつさんを、閉じたり開いたりして、洗濯バサミみたいにするオレンジの手。
この手の正体とは・・・。
そもそもぱんつさんの正体とは・・・。
『ぱんつさん』の素敵なところ
- くせになる独特過ぎる世界観
- 次々と変わっていく視点
- シンプル過ぎる文章
この絵本は開く前から、独特の世界観をひしひしと感じます。
タイトルと表紙の絵から、くせが強いことは明らかです。
しかし、この絵本のすごいところは、中身がさらにくせが強く、独特の世界観が広がっている点です。
いきなり、土から顔を出すぱんつさん。
そして準備運動を始めます。
その後、まさかの栓抜きにされるぱんつさん。
ネックレスに、洗濯バサミと、「その発想はなかった!」と一本取られっぱなしです。
子どもたちも「連れてかれちゃった!」「栓抜きー!?」と驚かされっぱなしです。
でも、妙にくせになり、何回も読み返したり、じっくりぱんつさんを観察したくなる不思議な魅力に溢れているのです。
また、次々に視点が大きいものに変わっていくのも、この絵本の面白いところでしょう。
人間と同じくらいの大きさかと思っていたら、栓抜きくらいだとわかる。
栓抜きくらいだと思っていたら、ネックレスの飾りくらいだとわかる。
と、次々と大きさの感覚が変わっていく不思議な面白さは、この絵本の醍醐味だと思います。
最後に人間目線になるのも面白く、そこから一番最初のぱんつさんの大きさを逆算出来たりもするので、改めて読み直したり、深く考えてみたくなるのです。
世界観と、絵も特徴的ですが、文章も負けてはいません。
「ずぼ ずぼ ずぼ ずぼ」
「くび こき こき こき こき」
「うわぁい ねっくれす」
など、ほぼシンプルな擬音と、一言会話で出来ている文章。
これが不思議でゆる~いこの世界観に、見事なほどフィットしているのです。
ぱんつさんたちの、穏やかでゆる~く、細かいことは気にしない雰囲気がものすごくよく出ている文章です。
予想外過ぎる展開に、どんどん移り変わる視点がとても面白い。
一度読んだらぱんつさんの虜になってしまう、不思議な魅力の詰まったナンセンス絵本です。
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