作:せきゆうこ 出版:PHP研究所
楽しいことを探していたオバケたち。
ある日、人間の世界に「誕生日会」なるものがあることを聞きつけます。
オバケたちは、誕生日会乗っ取り作戦を決行しますが・・・。
あらすじ
人里離れた山奥に、オバケたちが漂っていました。
オバケたちはいつも「何かいいことないかな~」と考えていました。
そんなある日、町に行っていたオバケが慌てて帰ってきました。
そのオバケが言うには、ちまたでは「お誕生日会」と言うもので盛り上がっているらしいのです。
プレゼントを貰え、ケーキを食べ、ちやほやしてもらえるのだそう。
そこでオバケの親分と仲間たちは、もうすぐ開かれるという、大きな屋敷のぼっちゃんの誕生日会を乗っ取ることにしました。
オバケがぼっちゃんに化けて、ぼっちゃんの代わりにプレゼントもごちそうも、もらってしまおうというのです。
まずは聞き込みをして、ぼっちゃんの情報を集めます。
情報が集め終わると、いよいよオバケはぼっちゃんの姿に変装します。
そして、ついに誕生日会の日を迎えました。
ぼっちゃんに変装したオバケと一緒に、他のオバケたちも招待客に化けて参加します。
パーティー会場に通されて、オバケたちが見たのは豪華なごちそうの数々でした。
胸が躍るオバケたち。
そんな中、大きないびきが聞こえてきます。
見ると、誕生日の帽子を被り、毛布にくるまり眠っている者がいるではありませんか。
オバケたちはぼっちゃんに違いないと、その帽子を奪います。
いよいよ乗っ取りを開始しようとしたその時・・・。
「ワン!」と犬の鳴き声が。
寝ていたのはなんと犬だったのです。
オバケたちはぼっちゃんの写真に、犬が映っていたのを思い出しました。
オバケたちは考えました。
犬の方がぼっちゃんだったのだと。
さあ、大変です。
こうなったら犬に化けないといけません。
オバケたちは色々なものを使い、なんとか犬に化けることが出来ました。
そうこうしているうちに、パーティー会場へお客さんがどんどんやってきます。
いよいよ本当に乗っ取り計画を決行する時がやってきました。
ぼっちゃんは食いしん坊ということで、まずは目の前の料理を口いっぱい頬張ります。
しかし、それはドッグフードでした。
とても食べられたものではありません。
気を取り直して、ボール遊びが好きというのを見せることに。
他のオバケが投げたボールを、犬に化けたオバケが取りに行きます。
ですが、ボールはプールの中に落ちてしましました。
そして、オバケも一緒にプールの中へ。
オバケは泳ぐことが出来ません。
そのままプールの底へ沈んでいくオバケ。
このまま死んでしまうのでしょうか。
もう死んでいるのですが・・・。
『おばけにプレゼントくれませんか?』の素敵なところ
- 愛嬌がありつつもしっかり不気味なオバケ
- 最初から最後まで自業自得なオバケたち
- 最後の最後にどんでん返し
この絵本のオバケたちは、表情豊かでどっちかというとかわいいオバケ。
ですが、どこか不気味な雰囲気も、しっかり持っているのが素敵なところです。
影があったり、恨めしそうな顔をしているからかもしれません。
陽気で調子がよく、ノリノリですが、ちゃんとオバケらしい怖さがあるのです。
そんなオバケたちが繰り広げるのは、誕生日会の乗っ取りです。
もう完全に自分たちのため。
ろくなことをしない悪い奴です。
でも、誕生日会では勘違いが勘違いを呼び、犬に化けたり、ドッグフードを食べたり、プールに落ちたりと踏んだり蹴ったり。
最後に残った一つの希望も、しっかり失敗に終わるという徹底ぶり。
ですが、全部自業自得で、全然かわいそうな感じがしないのが、この絵本のすごいところだと思います。
「悪いことしようとするからー」
「自分のせいだよね~」
と、子どもたちからも呆れられてしまいます。
でも、憎めないのがこのオバケたちの魅力です。
何回も、このしょうもないオバケたちを見たくなってしまうのです。
また、最後の最後にまさかのどんでん返しが用意されているのも、面白いポイントです。
これには子どもたちも、
「えー!?」
とびっくり。
終わったと思っていたら、まさかのネタばらしがあり、思わず見返したくなってしまいます。
これを知って、2回目に見ると、また違った面白さが感じられるのではないでしょうか。
誕生日会を乗っ取るために、あの手この手で知恵を絞るオバケたち。
そんな悪だくみが、全部見事に失敗していく自業自得な、けどなんだか憎めないお話です。
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