文:苅田澄子 絵:中川学 出版:アリス館
何百年も不動で座り続ける大仏様。
なんと、運動会に参加することになりました。
大仏様が走る、食べる、組体操をする・・・。
ここでしか見られない世にも珍しい絵本です。
あらすじ
今日は仏様たちの運動会。
阿弥陀如来に弥勒菩薩、不動明王、千手観音・・・。
大勢の仏様が集まってきました。
大きな大きな大仏様は初参加です。
双子の仁王様の呼びかけで、準備運動が始まりました。
運動不足の大仏様は大変そうです。
準備体操が終わると、いよいよ競技が始まります。
最初は玉入れ。
手のたくさんある千手観音がすごい勢いで玉を入れます。
対して、大仏様は太い指では小さな玉を上手くつかめません。
玉入れは負けてしまいました。
次はまんじゅう食い競争。
狛犬が軽やかにまんじゅうを咥えます。
大仏様も頑張りますが、大きな鼻が邪魔でまんじゅうに届きませんでした。
その後は、ザ・七福神バンドの音楽で、仏ダンスです。
ノリノリで踊る大仏様でしたが、踊るたびに地面が揺れるのでみんな大変。
さらに障害物競争でも、大仏様は一つも越えられませんでした・・・。
大仏様が輝ける種目はあるのでしょうか・・・。
『だいぶつさまのうんどうかい』の素敵なところ
- バリバリ動く大仏様
- リアルな造形で運動会をする色々な仏様たち
- ありがた過ぎる最後の場面
この絵本の見どころは、なんと言ってもバリバリ動く大仏様。
座っている所しか見たことのない大仏様が、屈伸したり、走ったり、踊ったり。
新たな一面を見せてくれます。
さらに、大仏様ならではのボケも忘れません。
座りっぱなしネタや、大きすぎるネタの宝庫。
本物の大仏様を見たことがある人なら、ニヤリとしてしまいます。
特に大きさは、ページをいっぱいに使って表現されているので大迫力。
大仏様を知らない子どもでも、その圧倒的な大きさは伝わると思います。
そんな大仏様含め、仏様の造形がとにかくリアルなのもこの絵本の素敵なところ。
ありがたい表情や、指の形、不動明王の背後で燃える炎など、仏像がそのまま動き出したようなリアルさなのです。
造形はリアルなのに、動きは普通の運動会というギャップが面白い。
ありがたい仏様が、ストレッチしていたり、本気で走ったり、転んだり、日傘をさして応援していたりします。
さらに、超能力などは使いません。
千手観音がたくさんの手で玉入れをしたりはしますが、皆、己の肉体のみでちゃんと運動会をするのです。
この普通さが、この絵本のなにより面白いところだと思います。
もちろん仏様を知らない子も楽しめます。
「手がいっぱいあるね」
「カラス天狗みたい」
「怒った顔してるよ」
など、馴染みのない仏様に興味津々。
それぞれの仏様の名前も載っているので、自分で調べることも出来てしまいます。
さて、そんな運動会の最後の種目。
全ての参加者で力を合わせます。
その見開き一ページのありがたいこと。
開いた瞬間に、極楽浄土の来てしまったかのようです。
たくさんの仏様が一堂に会しポーズをとる神々しさ。
さっきまで汗をかいて運動していたのが嘘のよう。
この神々しさの後、風呂に入りに行く庶民感も面白いところなのですが。
ありがたい仏様たちが、普通に運動会をするというギャップ。
リアル過ぎる造形により、このギャップが最大限に活かされたありがたい絵本です。
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