もしも・・・(4歳~)

絵本

文:神沢利子 画:太田大八 出版:復刊ドットコム

自由になりたい時に頭に浮かぶ空想。

「もしも・・・」

空想の世界ではあんなものにも、こんなものにもなれてしまいます。

小さなリスにも、大きなクジラにだって。

あらすじ

お父さんとお母さんは、小さな弟ばかり可愛がる。

だからつまらなくて、逃げ出して草の中に隠れているところ。

じっとしていたら、チョウチョが来て花にとまった。

もしも私がちょうちょだったら、花のジュースを飲んで、自由に好きな所へ飛んでいく。

でも、虫取り網を持った子が来たら大変。

そうね、ウサギの方がいいな。

草原をかけて、跳ねて遊ぶ。

夜までずーっと遊んでられる。

でも、いつも鼻をひくひく、口をもごもごさせている。

きっとくたびれちゃうわ。

そうなの、なまけものがいい。

高い気にぶら下がって、なんにもしなくていい。

でも、友だちはどこにいるの?

苔が生えるまで、遊ばずじーっとしているのかしら。

私、フラミンゴがいい。

足をそろえてみんなで歩くとダンスしているみたい。

でも、私と友だちがあんまりそっくりで、どっちが私かわからなくなっちゃう。

そうね、、私・・・。

『もしも・・・』の素敵なところ

  • 小さな弟を持つお姉ちゃんの複雑な気持ち
  • なんにでもなれる「もしも・・・」
  • 人間に戻る時

「弟ばっかり・・・」と思ったことのある、お兄ちゃんお姉ちゃんは多いと思います。

この絵本のお姉ちゃんもその一人。

遊びを邪魔され、弟ばかりだっこされ、つまらなくなって逃げ出して来ました。

お姉ちゃんの等身大なつぶやきや、仕草に「弟なんていらない」と思ったことのある子は、とても共感できるでしょう。

「こういう時あるよ。塗り絵をぐちゃぐちゃにしちゃうんだもん」など、エピソードが思い起こされているようでした。

そんな時、強い味方になってくれるのが空想です。

今の現実から解放され、自由になんにでもなれる時間。

チョウチョにも、ウサギにも、クジラにだって・・・。

でも、楽しいことだけじゃなく、困りそうなことも一緒に考えているのが面白いところ。

それは今の不安感が影響しているのかもしれません。

どんな生き物になっても、なにかしら困ったことは出てきます。

子どもたちも、

「私もチョウチョがいい」

「ぼくだったらサメだな~、なんでも食べられるもん」

などと自分も空想の世界を楽しみつつ、

「確かに捕まったら大変!」

など、困ったことにも共感していました。

そんな中、人間に戻る瞬間がやってきます。

でも、人間に戻った時には、最初とは違う心境になっているのが、この絵本のとても素敵なところです。

一人でゆっくりじっくりと考える時間があったからなのでしょう。

今の状況に、納得できたようでした。

一人の時間の大切さと、ずっと一人の寂しさ。

その両方がバランスよく描かれているのです。

色んな生き物になりきる空想の世界を通して、深く深く自分自身と対話する。

そんな時間の大切さを、お姉ちゃんの心の成長を通して伝えてくれる絵本です。

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