文:神沢利子 絵:赤羽末吉 出版:偕成社
けちんぼをすると罰が当たるという教訓。
それが痛いほどにわかる昔話です。
でも、ちょっと罰が強すぎて、オオカミが可哀そうな気も・・・。
あらすじ
腹を空かせたおおかみどんが、海辺で死んだクジラを見つけました。
食べても食べてもなくならず、たらふく食べた後に、咥えられるだけ持って帰ることにしました。
帰る途中に人間の村を通りかかりました。
立派な家の前で二人の兄弟が遊んでいます。
お兄さんがおおかみどんを見つけると、声をかけてきました。
肉をわけて欲しいというのです。
ですが、おおかみどんは知らんぷりで行こうとします。
すると、弟までが「肉をわけてください」と頼みます。
それでも知らんぷりして行こうとすると、兄さんが怒って怒鳴りました。
「やい、けちんぼ。山へ帰ってもろくなことはないぞ。」と。
さらに追いかけて怒鳴ります。
「はんの木の林でも、やなぎの林でも、露が雨になり、みぞれになって降って来て、そこでお前はぶっ倒れる。土を被って、お前の背中に草木が生えて、鳥や獣が住み着いて、しっこしてフンたれて、息が詰まってそこでおしまいだ。」と。
おおかみどんはそんなことは気にせずに、山に帰っていきました。
ところが、はんの木の林に来かかった時、おおかみどんの口から勝手に言葉が飛び出しました。
「はんの木の露、落ちれ落ちれ」
驚く間もなく、本当に露が雨のように降ってきます。
あの兄弟の言っていたことが、本当に起こってしまうのでしょうか。
『けちんぼおおかみ』の素敵なところ
- 予言されているからこそのおもしろさ
- とてもわかりやすい教訓
- おおかみどんの心に染みる最後の一言
この絵本では、兄妹が予言したことが、本当にオオカミの身に降りかかります。
この、先に展開が知らされているというのが面白いのです。
最初はオオカミと一緒で、半信半疑だった子どもたち。
しかし、はんの木の林で本当に予言通りになってしまいます。
「本当だったんだ!」
と思うと同時に、オオカミの行く末が心配になってきます。
予言の通りに行ったら死んでしまうのですから。
でも、残酷なことに一つ一つ予言は的中していきます。
わかっている結末に、徐々に向かっていくやきもき感と、どうしようもない感。
これを楽しめるのが、この絵本の醍醐味だと思います。
そして、救いのない勧善懲悪だからこその、わかりやすい教訓もこの絵本の魅力です。
きっとオオカミの姿を見て、「けちんぼはしないようにしよう」と思うでしょう。
純粋過ぎるわかりやすさは、昔話ならではの魅力なのではないでしょうか。
ちょっとオオカミが可哀そうな気もしますが・・・。
そんなオオカミが最後の場面で残す言葉。
これが実体験に基づいているからか、物凄く心に染みます。
ここまでのオオカミの姿を見ているからこそ、その言葉の重みを感じます。
この言葉を受け、子どもたちもしみじみと、
「けちんぼはしないようにしよう・・・」
とつぶやいているのでした。
けちんぼをしたことで、ひどい目に合うオオカミの姿とその言葉。
それらを通して、「けちんぼはよくない」という教訓を感じさせてくれる昔話絵本です。
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