文・絵:マルティーヌ・ブール 訳:松島京子 出版:富山房インターナショナル
幻の生き物ユニコーン。
その美しさ、繊細さは見るものを魅了してやみません。
その魅力が目一杯詰まった、ある王国の物語です。
あらすじ
昔、小さな王国の、小さな城に、小さい王様が住んでいました。
ある日、王様が森を散歩していると、見たこともない動物を見つけました。
王様は騎士のプチパに、「その動物をお妃に見せたいから探してきてくれ」と頼みました。
どんな動物かをプチパが聞くと、「雪のように白く、風より速く走り、額には角が一本ある」と答えました。
プチパは早速森に行き、ダイサギを連れて帰りました。
それを見て王様は、「四つ足の動物で、鳥ではない」と言いました。
次に連れてきたのはヤギでした。
王様は「角が一本だ」と怒りました。
次はサイです。
それを見て、またもや怒る王様に愛想をつかし、プチパは家へ帰ってしまいました。
仕方なく、王様は一人で森へ探しに行きました・・・。
ある朝、お妃は退屈して、森へ散歩に行くことにしました。
そして、凍った湖のほとりまで来た時、素晴らしい動物に会ったのです。
そっと近づき、王様の言っていた動物か尋ねると、その動物は「ユニコーンです」と答えました。
あまりにユニコーンが綺麗なので、お妃はユニコーンをお城に誘いました。
こうして、ユニコーンはお城で暮らすことになりました。
お妃とユニコーンが城でお話をしていると、王様が帰ってきてびっくりしたのは言うまでもありません。
その後、お妃に大切に世話をされているうち、季節がいくつも巡っていきました。
そんなある朝、ユニコーンは病気になってしまいます。
その病気は誰にも治せず、ユニコーンは段々と弱っていきました。
ユニコーンを治す方法は見つかるのでしょうか。
『ユニコーン』の素敵なところ
- ユニコーンの美しく気品ある魅力が詰っている
- ユニコーンと一緒に暮らすという夢がかなう
- 自然とともにあるユニコーン
この絵本はユニコーンの魅力に満ち溢れています。
真っ白な毛並みと、美しい角。
気品を感じる立ち振る舞いと、荘厳な雰囲気。
どれもが幻の生き物ユニコーンのイメージにぴったりです。
それが美しい絵と、繊細な文章表現で、見事に再現されています。
子どもたちも絵を見れば「綺麗・・・」「まっしろ!」と息を呑み、言葉を聞けば聞き入ってしまうなど、ユニコーンの持つミステリアスな雰囲気や魅力に、すっかり引き込まれているようでした。
そんなユニコーンと一緒に暮らす。
この夢のようなひと時を叶えてくれるのも、この絵本の素敵なところ。
お妃の言葉を聞き入れて、一緒についてくるユニコーン。
そこでの暮らしは、お互いに楽しそうで、幸せそうで、まさに夢のような暮らしです。
一緒におしゃべりだって出来てしまいます。
それを見て「いいな~」「うちにも来ないかな~」と言ったり、「うちには入りきらないから無理だ~」と現実的な嘆きを漏らしたりする子どもたち。
どの子も、一緒に暮らすことを夢見ているようでした。
しかし、その暮らしは長くは続きませんでした。
ユニコーンはやはり人の世界では暮らせないのです。
それは病気になって現れます。
その結末は、まさに自然と生きるユニコーンの姿を見せつけてくれるものでした。
きっと、この自然とともに生きる姿こそが、美しさや気高さを生み出しているものなのでしょう。
最後の場面は、この絵本の中で、最もユニコーンが輝いていると感じられる瞬間でもありました。
絵と文章表現と物語。
その全てで、ユニコーンの魅力を溢れんばかりに伝えてくれる絵本です。
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