ユニコーン(5歳~)

絵本

文・絵:マルティーヌ・ブール 訳:松島京子 出版:富山房インターナショナル

幻の生き物ユニコーン。

その美しさ、繊細さは見るものを魅了してやみません。

その魅力が目一杯詰まった、ある王国の物語です。

あらすじ

昔、小さな王国の、小さな城に、小さい王様が住んでいました。

ある日、王様が森を散歩していると、見たこともない動物を見つけました。

王様は騎士のプチパに、「その動物をお妃に見せたいから探してきてくれ」と頼みました。

どんな動物かをプチパが聞くと、「雪のように白く、風より速く走り、額には角が一本ある」と答えました。

プチパは早速森に行き、ダイサギを連れて帰りました。

それを見て王様は、「四つ足の動物で、鳥ではない」と言いました。

次に連れてきたのはヤギでした。

王様は「角が一本だ」と怒りました。

次はサイです。

それを見て、またもや怒る王様に愛想をつかし、プチパは家へ帰ってしまいました。

仕方なく、王様は一人で森へ探しに行きました・・・。

ある朝、お妃は退屈して、森へ散歩に行くことにしました。

そして、凍った湖のほとりまで来た時、素晴らしい動物に会ったのです。

そっと近づき、王様の言っていた動物か尋ねると、その動物は「ユニコーンです」と答えました。

あまりにユニコーンが綺麗なので、お妃はユニコーンをお城に誘いました。

こうして、ユニコーンはお城で暮らすことになりました。

お妃とユニコーンが城でお話をしていると、王様が帰ってきてびっくりしたのは言うまでもありません。

その後、お妃に大切に世話をされているうち、季節がいくつも巡っていきました。

そんなある朝、ユニコーンは病気になってしまいます。

その病気は誰にも治せず、ユニコーンは段々と弱っていきました。

ユニコーンを治す方法は見つかるのでしょうか。

『ユニコーン』の素敵なところ

  • ユニコーンの美しく気品ある魅力が詰っている
  • ユニコーンと一緒に暮らすという夢がかなう
  • 自然とともにあるユニコーン

この絵本はユニコーンの魅力に満ち溢れています。

真っ白な毛並みと、美しい角。

気品を感じる立ち振る舞いと、荘厳な雰囲気。

どれもが幻の生き物ユニコーンのイメージにぴったりです。

それが美しい絵と、繊細な文章表現で、見事に再現されています。

子どもたちも絵を見れば「綺麗・・・」「まっしろ!」と息を呑み、言葉を聞けば聞き入ってしまうなど、ユニコーンの持つミステリアスな雰囲気や魅力に、すっかり引き込まれているようでした。

そんなユニコーンと一緒に暮らす。

この夢のようなひと時を叶えてくれるのも、この絵本の素敵なところ。

お妃の言葉を聞き入れて、一緒についてくるユニコーン。

そこでの暮らしは、お互いに楽しそうで、幸せそうで、まさに夢のような暮らしです。

一緒におしゃべりだって出来てしまいます。

それを見て「いいな~」「うちにも来ないかな~」と言ったり、「うちには入りきらないから無理だ~」と現実的な嘆きを漏らしたりする子どもたち。

どの子も、一緒に暮らすことを夢見ているようでした。

しかし、その暮らしは長くは続きませんでした。

ユニコーンはやはり人の世界では暮らせないのです。

それは病気になって現れます。

その結末は、まさに自然と生きるユニコーンの姿を見せつけてくれるものでした。

きっと、この自然とともに生きる姿こそが、美しさや気高さを生み出しているものなのでしょう。

最後の場面は、この絵本の中で、最もユニコーンが輝いていると感じられる瞬間でもありました。

絵と文章表現と物語。

その全てで、ユニコーンの魅力を溢れんばかりに伝えてくれる絵本です。

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