作:塚本やすし 出版:ポプラ社
焼き魚を食べないと、呪われるって知っていますか?
「食べてくれ~」と追ってくる焼き魚。
それでも食べない男の子。
そのやり取りが面白い絵本です。
あらすじ
ぼくは焼き魚が嫌いです。
骨があって食べにくいし、苦いからです。
ある日、夕飯の焼き魚を突っついて、食べているふりをしました。
それを見てお母さんは、「もっとちゃんと食べなさい」と怒ります。
お風呂に入っていると、食べ散らかして、骨だけになった焼き魚がお風呂に入ってきました。
「嫌わないでくれ~、ちゃんと、食べてくれ~」と言ってきます。
びっくりです。
寝ていると、焼き魚も布団に入り、朝ごはんを食べていると「食べてくれ~」と言ってきます。
いい加減にぼくは怒りました。
「ぼくは焼き魚が大っ嫌いなんだ!」と。
それでも、焼き魚は引きさがりません。
そして焼き魚がついに「もう!食べてやるー!」と叫んで、パクッ。
ぼくを食べてしまいました。
ぼくの運命やいかに・・・。
『やきざかなののろい』の素敵なところ
- 怖いような怖くないような呪い
- 呪いに屈しない焼き魚嫌いの主張
- 好きになるためには・・・
この絵本では、食べ散らかした焼き魚が「食べてくれ~」と迫ってきます。
それだけなら怖いのですが、一緒に布団に入って寝るだけの時もあるなど、怖いような可愛いような、不思議な呪いに仕上がっています。
それに、基本的にはしゃべるだけ。
「食べてくれ~」と言い続けるだけなので、あんまり怖くもありません。
そんな愛嬌ある呪いですが、ずーっといい続けられるとまいってしまいます。
でも、男の子が強いのもこの絵本の面白いところ。
言い続けられても、決して食べようとはしないのです。
嫌いなものは嫌い。
「ぼくは焼き魚が大っ嫌いなんだ!」
と、呪いにはっきりと言い返すのだから大したもの。
こんなにも呪いと、バチバチ言い合う絵本は中々見かけません。
さて、両者一歩も譲らない、主張のぶつけ合いの結末は、意外なものでした。
結局、言葉で言い続けても嫌いなものは嫌いです。
でも、それを好きになる時は、「無理やり食べてもらうのではなく、好きが伝染する時なのだな~」と思わせてくれる結末。
これがこの絵本の一番すごくて、素敵なところだと思います。
焼き魚の呪いと男の子の激しいぶつかり合いを見ることで、「食べなさい」から「美味しいよ」に変えていく大切さを感じる絵本です。
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