作:大串ゆうじ 出版社:偕成社
みんな大好きなお弁当。
でも、山神様のお弁当はスケールが違います。
作るのも、村中総出の大仕事。
その工程も、出来上がりも楽しい絵本です。
あらすじ
ぼくの村では、20年に一度、「やまがみさまだいまんぷくまつり」が開催されます。
山の向こうから来る山神様に、巨大なお弁当を作るお祭りです。
山神様がやってくるのは、春の桜が満開になった日。
お弁当には山神様に合わせて、マンモスのお肉や、卵500個、キリンの首くらいのメガちくわなど、なんでも大きいものが入ります。
ぼくは揚げ物にパン粉をつける係です。
とうとう桜が満開になり、最後の仕上げを急ぎます。
箸と芋まんじゅうの神輿が村を一周して、最後に梅干しとゴマを乗せたら・・・。
巨大弁当の完成です。
その時、大きな足音とともに、山神様がやってきました。
果たして、山神様は満足してくれるのでしょうか。
『やまがみさまのきょだいべんとう』の素敵なところ
- ネタ満載な村の様子
- 全てが巨大なお弁当作り
- サステナブル過ぎる祭りの裏目的
この絵本でまず目を引くのが、ページいっぱいに描き込まれた、村の様子でしょう。
所狭しと人がいる様子を、俯瞰で描いている様はまるで「ウォーリーを探せ」のようです。
しかも、その様子はネタも所狭しと詰まっています。
巨大弁当箱の中で、鏡餅を置いて成功を祈願している。
その隣で開かれるゲートボール。
巨大フライヤーに油を入れようとしているトラック。
巨大まな板をモップで掃除する忍者。
などなど、それぞれの場所で、誰かが何かしらをしているのです。
さらにそれらが何をしようとしているのかがイメージ出来るのが面白いところ。
勝手に頭の中でストーリーや、お弁当作りの様子が補完されていくのです。
そして、いよいよお弁当作りが始まります。
そのスケールの大きなこと。
包丁はクレーン車のような専用メカで動かします。
米は大きいので、一粒ずつ子どもが運んできます。
フライには火炎放射器のような機械でパン粉を振りかけ、ダンプカーのようなフライヤーで揚げるのです。
全てのスケールが大きく、まるで工事現場のよう。
これには子どもたちの目も釘付け。
見るところが多すぎて、しゃべる暇もありません。
しかし、この祭りには驚くべき裏目的がありました。
最後に明かされる、村が存続するために重要な目的です。
そのなんとサステナブルなこと。
山神様を敬い、自然とともに生きるこの村を象徴するような、素敵な締めくくりになっているのです。
スケールの大きすぎる弁当作りを思い切り楽しみつつも、自然と文明の調和についても考えさせられる巨大で、奥が深い絵本です。
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