作:かこさとし 出版:復刊ドットコム
傍若無人な海賊がぼがぼまる。
そんな海賊団の前に、ある人物が現れた。
それは、昔、海賊団が海に捨てた赤ん坊。
因縁の対決が始まります。
あらすじ
昔々、南の島に、とても強くて悪い、がぼがぼまるという海賊がいました。
荷物を奪ったり、船を沈めたり、乱暴したり、殺したり。
散々悪いことをしていました。
そんなある日、見張りの子分が叫びました。
船の動きがおかしいというのです。
船は変な島の入り江の中へ、入っていってしまいました。
すると、さらに大変なことが起こります。
向うから、何かが近づいてくるのです。
なんと近づいてきたのは、小さい男の子でした。
男の子は船に近づくと、がぼがぼまるに言いました。
「5年前、小さな村を襲い大勢の人を殺し、生まれたばかりの赤ん坊を海に投げ捨てたことがあっただろう」と。
男の子は、海の友だちとともに、がぼがぼまるへ罰を与えにやってきたのでした。
そんなこと覚えていないがぼがぼまるは、子分へ鉄砲を撃つよう命じました。
その時、海の中から大きなサメが、海賊船に襲い掛かりました。
たまらず、がぼがぼまるが大砲を撃とうとすると、今度は大きなクジラは船を揺さぶります。
さらに、ノコギリザメと、トンカチザメが船に穴を開けると、火薬が湿り鉄砲も大砲も撃てなくなってしまいました。
そして最後の仕上げです。
海の生き物たちがみんな集まってきました。
海賊たちは一体どうなってしまうのでしょうか。
『かいぞくがぼがぼまる』の素敵なところ
- 救いようがないほど悪い海賊
- 大迫力の戦いの場面
- 情けない自業自得な最後
この絵本に出てくる海賊は、もの凄く悪いです。
盗みに、暴力に、殺しまで。
悪逆の限りを尽くします。
中々、ここまでひどい海賊が出てくる絵本は見かけません。
しかし、だからこそ、この後の戦いが熱いものになるのです。
心の底から男の子のことを応援できるのです。
この男の子もまた、海賊たちの被害者です。
その境遇の悲惨なこと。
故郷を襲われ、赤ん坊なのに海に捨てられ、本当にかわいそうな生い立ちです。
そんな赤ん坊が、海の仲間に育てられ、成長して海賊の前に立ちはだかる。
もう、応援しないわけにはいきません。
そこへ海の生き物が駆けつける、大迫力の戦いです。
胸が熱くならないわけがありません。
サメが襲い掛かり、クジラが突進する。
さらには海中の生き物が結集し、海賊たちを追い詰める。
心の底からスカッとして「やった!」と思わせてくれるのです。
さて、海賊をやっつけることに成功した男の子。
ですが、海賊と同じように相手を殺したりはしません。
やり直す機会を与えてくれます。
最初は喜ぶ海賊たち。
ですが、その結末は、まさにこの海賊たちらしい自業自得なものでした。
この終わり方が、因果応報と自業自得を地でいっていて、なんとも素敵なのです。
救いようのない悪すぎる海賊団に、心の底から男の子の復讐を応援したくなる。
大迫力の海戦がとっても熱い、気持ちがスカッとする絵本です。
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