すいようびくんのげんきだま(5歳~)

絵本

文:那須田淳 絵:エリック・バトゥー 出版:講談社

水曜日の妖精すいようびくん。

彼がどんな仕事をしているか知っていますか?

知らないのなら、すいようびくんの一日をのぞいてみましょう。

あらすじ

ぼくは、すいようびくんと友だちになった。

ちょうど一週間の真ん中の日。

夜が明けようとする頃、すいようびくんはやってくる。

すいようびくんは、海岸の岩穴の中から青い月の光をすくったり、

野原の草にたまった緑のしずくや、花の色とりどりの夜露を集めたり、

森の木々の間に漂う、紫の霧を袋に詰めたりする。

登る前の朝日の赤も。

集めた色を家に持って帰ると、全部お鍋に入れ、夢や子どもたちの笑い声、幸せな気持ちも加えてグツグツ煮る。

それを棒みたく長く丸めて冷ましたら、包丁で小さく切って飴のようにしたら、げんきだまの出来上がり。

それを、一週間の他の妖精みんなで、世界中に配って歩く。

そして、雨が降るとげんきだまから七色の光が生まれ、空に虹が出来るんだって。

『すいようびくんのげんきだま』の素敵なところ

  • とてもロマンチックな虹の作り方
  • 優しくも美しい文章と絵
  • ぼくとすいようびくんのほんわかしたやり取り

この絵本でとても印象的なのは、虹の作り方です。

自然から色を集めて、夢や、幸せや、笑い声を一緒に混ぜ合わせて作るげんきだま。

そこから虹の色が出来ているというのです。

とてもロマンチックで、夢のある作り方です。

でも、虹をみた時の感動や、心が洗われるような感覚、人を元気にしてくれる力を思い出すと、この作り方になんだかもの凄く説得力があるのです。

また、虹をみた時に、あの色が、夢や幸せ笑いが詰ったげんきだまから出来ていると思うと、自分もより幸せな気持ちになってしまうのです。

そんな美しい虹を、さらに素敵なものにしてくれている要素が、文章と絵にあります。

色を集める時の優しくも美しい文学的な文章。

「海岸の岩の穴の中をのぞいて、青い月の光をすくったり」

「花の黄色や橙や赤色の、夜露を集めたり」

「木々の間に漂う紫の霧を、袋に詰めたり」

聞いているだけで、色がより輝きを増し、より鮮やかに感じられてきます。

どこか厳かな感じもあり、なにかすごいことをしようとしていることも感じられます。

そして、その文章の美しい情景を、そのまま浮かび上がらせたような色鮮やかな絵。

この二つが組み合わさって、より美しくロマンチックになっているのです。

さて、そんなすごい仕事を終えたすいようびくん。

仕事終わりに、友だちのぼくと、ゆったりした時間を過ごします。

それまでの幻想的で厳かな雰囲気とはうって変わり、とてもほんわかしたやり取りが交わされます。

このやり取りを見ていると、すいようびくんがとても身近な存在に感じられ、自分も友だちになりたいなと思ってしまいます。

特に穏やかな顔で「ふふふ」と笑う姿が印象的。

前半と後半の雰囲気のギャップと、その中で常に流れる優しい雰囲気が、この絵本のとても素敵なところだと思います。

すいようびくんの仕事を見ることで、なぜ虹があんなにも美しいかがわかる。

綺麗で不思議でとても優しい水曜日を、過ごすことが出来る絵本です。

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