文:谷本雄治 絵:サトウマサノリ 出版:文溪堂
大きなあごを持つノコギリクワガタ。
そんなクワガタの夏を中心に、一生を描き出します。
リアル過ぎるクワガタの姿が、かっこよすぎる絵本です。
あらすじ
夏の始めのくぬぎの森。
腐った木の中から、ノコギリクワガタのオスが顔を出しました。
木の上を歩いていると、コクワガタのおじいさんが声をかけてきました。
ノコギリクワガタが地上に出てきたばかりなのを知ると、コクワガタは樹液のあるところへ案内してくれました。
しかし、そこには別のノコギリクワガタが・・・。
樹液をわけてくれず、ケンカになりかけたその時。
オオスズメバチが現れて、樹液を吸っていたノコギリクワガタを、追い出してしまったのです。
次に、新しくやってきたノコギリクワガタが、オオスズメバチと戦おうとした時です。
突然、くぬぎの木が大きく揺れました。
ノコギリクワガタは思わず、足を縮め、自分から地面に落ちました。
目を覚ますと、枝につかまり体を起こし、また木を登って樹液を吸いました。
お腹が膨れると、高い枝につかまり、お昼寝の時間です。
夕方になり、また樹液を吸いに行くと、一匹のメスと出会い、仲良くなりました。
そして、メスは根元が腐った木を見つけ、卵を産み付けました。
孵化した幼虫たちは、枯れ木の中で育ちます。
木を食べ、進み、古い皮を脱いで・・・を繰り返し、大きくなっていくのです。
外敵から食べられず、冬を越し、春になると、サナギになる準備を始めます。
無事に、この幼虫も成虫になることが出来るのでしょうか。
『くわがたむしのなつ』の素敵なところ
- リアルでかっこよすぎるクワガタ
- クワガタの色々な秘密がわかる
- ノコギリクワガタの一生を詳しく見ることが出来る
この絵本の大きすぎる魅力は、なんといってもリアル過ぎるクワガタムシの姿。
表紙からすでに、魅力が満ち溢れています。
大きなあご、体のつや、力強い足・・・。
そのどれもがかっこよすぎます。
また、かっこいいだけではなく、愛嬌があるのも素敵なところ。
足を縮めて落下した後、ひっくり返って足をバタつかせているところ。
オオスズメバチにちょっかいを出されて困っているところ。
幼虫の頑張っているところ。
など、可愛いと思えるところもたくさんあります。
その両面がしっかり描かれているのです。
そして、かっこよさだけではなく、クワガタのたくさんの習性を見られるのもこの絵本の素敵なところ。
「成虫になった後、一年間地面の中で過ごす」
「ノコギリクワガタの大あごの形は3タイプにわかれる」
「ひっくり返ったクワガタムシは、掴まるものがないと起き上がれない」
など、物語の途中に、「どうしてその行動をしたのか」を注釈で書いてくれています。
これにより、物語を楽しみつつも、より深くクワガタの習性を知ることが出来るのです。
さて、この絵本はクワガタムシの夏だけでなく、その一生まで描かれています。
卵を産んだ後、その卵が成虫になるまでの過程まで、詳しく描かれているのです。
木の中で大きくなる様子。
その中が安全なわけではないこと。
サナギになるための準備。
などなど、そちらだけでも一冊の絵本になるくらい細かく描かれます。
まさに、ノコギリクワガタの一生を、全部見ることが出来る作りになっているのです。
そして、物語の終わりが、この絵本の始まりに繋がっているのも偶然ではないでしょう。
絵本の中で、クワガタムシの生の循環を感じることが出来るのも、素敵なところです。
ノコギリクワガタの力強く、かっこいい姿と、楽しい物語を通して。
その一生や、図鑑並みの知識を知ることが出来る、とても欲張りな一冊です。
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