文:高木仁三郎 絵:片山健 出版:のら書店
ある一つの池。
でも、見る視点によって全然違うものに見える。
そんな面白さを、体験できる絵本です。
あらすじ
夏休みのある日。
昼過ぎのひょうたん池・・・。
自転車のしょうちゃんから見ると、
景色が流れ、イヌが前を走り、池のほとりで釣りをしている人が見える。
釣りをしているよしくんからみると、
伸びた釣り竿の先に、トンボがとまっている。目の前に広がる水面が見える。
池の魚から見たら、
糸がついたエサが目の前で揺れている。水草や池の底、他の魚が見える。
かいつぶりのお母さんが見たら、
後ろをついてくる三匹の子どもが見える。
トンビ、カヤネズミ、ミツバチ・・・。
それぞれから見ると。
『ぼくからみると』の素敵なところ
- 視点が変わると世界が変わる
- 少しずつ繋がりのある視点
- 生命力あふれるひょうたん池
この絵本のなによりも面白いところは、色々な視点でひょうたん池を見ることが出来る所でしょう。
その視点も、本当にバリエーション豊か。
人間、小動物、空の上、水の中、虫・・・。
それぞれに全く違う景色を見せてくれます。
そして、色々なことに気付かせてくれます。
「空から見ると、ひょうたんに見える」
「草がこんなに大きく見えるんだ」
「池の中ってこんな感じなんだね」
などなど、普段気にも留めていないことへ、気付くきっかけをくれるのです。
そして、他者の視点を体験することにより、「どう見えているんだろう」という、想像力や興味が膨らむのも素敵なところです。
さて、そんな視点が、少しずつ繋がっているのも面白いところ。
自転車のしょうちゃんから見える、釣りをしているよしくん。
よしくんが垂らした釣り糸のエサを見る、池の魚。
池の魚が見上げている、かいつぶりのお母さん。
かいつぶりのお母さんが見上げている、空を飛ぶトンビ・・・。
と、少しずつ視点が交わり、次の視点に映っていく様はしりとりのよう。
このパズルのような、視点の移り変わりにより、驚くほど自然に視点が移動していくのです。
そんな様々な視点を体験できるこの絵本。
その中で、どんな視点にも共通して感じることがあります。
それがひょうたん池の、自然の生命力です。
生い茂る草木、そこに生きる動物、虫・・・。
そのどれもが、力強い生命力に溢れているのです。
見ているだけで力が湧いてくるような、自分も外に飛び出したくなるような。
そんな力強さに溢れた絵で描かれる世界が、色々な視点で見る魅力をより大きくしてくれているのでしょう。
見ていたら、ひょうたん池へ自分も入り込みたくなってしまうのです。
自然あふれるひょうたん池を、色々な生き物の、様々な視点から見ることが出来る。
視点の高さや、見える景色、たくさんの違いへの気付きが、楽しすぎる絵本です。
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