文:南谷佳世 絵:大畑いくの 出版:文溪堂
家に昔からあるお気に入りの絵本。
それは、パパやママのお気に入りの絵本でもありました。
そんなお気に入りの絵本を、ママと一緒に読む絵本です。
あらすじ
男の子りくは、ママに読んで欲しい絵本を持って来た。
何度も読んでもらっている、お気に入りの絵本だった。
絵本を開く時、ママが生まれる前からある絵本だということ。
ママも大好きで、りくのように何度も読んでもらったことを教えてくれた。
その絵本の名前は『ラミラとりんごの木』。
文:ミナミナ・カヨポンメㇺ 絵:イグノウ・オー・ハッタン。
すると、りくが言った。
「へーんな名前」。
ママも言った。
「パパもおんなじこと言ってたよ」。
そして、物語は始まった。
昔、東の方に小さな国があり、王の一人娘ラミラが住んでいました。
ラミラが10歳になる頃、大雨が降り続き、さらに日照りが続きました。
王と女王は話し合った結果、ラミラに遠い西にある大きなリンゴの木から、その実を貰ってくるよう頼みました。
その実を植えれば、たちどころにリンゴがなって、国が救われるというのです。
ラミラは泣き出しそうになりましたが、女王はラミラを抱きしめて言いました。
「旅に出たら、泣いても助けは来ないでしょう。泣きたくなったら歌いなさい」と。
その場面を見てりくが言った。
「ラミラ、偉いね。ママ」と。
ママも「そうだね。勇敢だね。女王様も」と言った。
ラミラが歌いながら歩いていくと、カエルがぴょんと跳ねました。
カエルはラミラの歌を褒め、自分は歌が下手なのだと言いました。
そこで、ラミラはカエルと一緒に歌うことにしました。
一緒に歌っているうちに、カエルは歌が上手になりました。
その場面を見て、りくも歌い出しました。
ママが褒めると、りくは「じゃあ、今度一緒に歌う」と言うのだった。
ラミラが歌いながらずんずん行くと、小鳥がウロウロしています。
聞くと、旦那が巣の材料を取りに行ったけれど、帰ってこず、もうすぐ卵が産まれてしまうというのです。
そこで、ラミラは自分の髪を切り、巣の材料にと渡しました。
すると、小鳥は大喜び。
ラミラに「リンゴの木は、歌が好きだから、歌ってあげるといいよ。」と教えてくれました。
それを見たりくは、「ラミラ、髪の毛切っちゃった。でもさ、短いのもかわいいよね」と言った。
ママも「そうだね。りく、そういうの大事よ」と答えた。
とっぷりと日が暮れて、ラミラは大きな木の下に腰をおろしました。
たくさん歩いたので、足がずきずき痛みます。
涙がこぼれそうになったその時、「お腹空いたよ、寒いよ」と小さな声が聞こえました。
リスの子どもです。
ラミラは笑顔で子リスをひざに乗せ、パンをわけてやりました。
そして、一緒に毛布にくるまって眠りました。
「りくね、ここ好き」とりく。
「ん、そうだよね」とママ。
りくが「ママは?」と聞くと、「ママはねぇ・・・、も少し後のとこ」と答えるのだった。
翌朝、さらに歩いていくと、とうとうリンゴの木が見えてきました・・・。
『わたしたちのえほん』の素敵なところ
- ママと一緒に絵本を読める絵本
- その絵本や読んで生きた人の歴史が垣間見える
- 読んだら、わたしたちの絵本を読んで欲しくなる
この絵本の素敵なところは、りくやママと一緒に絵本を読めること。
一対一で読み聞かせをしてもらうのを、体験できるところです。
この絵本は、ほとんどのページが『ラミラとりんごの木』の絵本です。
ラミラの物語を読む中で、場面に応じたりくやお母さんの会話が挟まれます。
それはまるで、リアルタイムにママに読んでもらっているようです。
感想や、共感、自分の好きな場面など、色々なことを話しながら物語は進んでいきます。
特に、ママの好きな場面を聞かれ、「も少し、後のとこ」と答えるところなどは、「どんな場面何だろう?」と先が気になってしまいます。
この面白さは、この絵本の一緒に読んでいるという作り、ならではだと思います。
さらに、面白いのが、絵本を読んでいる中で、この絵本やパパ、ママ、おじいちゃん、おばあちゃんの歴史が垣間見えることです。
「ママが子どもだった頃、おばあちゃんが読んでくれ、おじいちゃんも時々読んでくれた。」
「パパはここが大好きで、子どものころ好き過ぎて、自分の名前を書いちゃったんだって。」
など、自分と同じころの、パパやママの思いや行動が見えてきます。
この親近感や、共通点は、同じ絵本を通してだからこそ、より強く感じられるのでしょう。
まさに「わたしたちの絵本」です。
そんなりくとママの読み聞かせを見ていると、自分の「わたしたちの絵本」が欲しくなったり、知りたくなってくるものです。
家に昔からある絵本。
お母さんやお父さんは、どんな絵本が好きだったのか。
それを知り、一緒に読んでみたくなるのです。
きっと、この思いは、色々な絵本をより魅力的にしてくれるでしょう。
それが、この絵本の一番素敵なところなのかもしれません。
りくとママの読み聞かせを一緒に見ることで、「わたしたちの絵本」が知りたくなる、欲しくなる。
宝物の絵本を見つけるきっかけになってくれる絵本です。
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