作:はせがわせつこ 絵:ましませつこ 出版:ポプラ社
ドアの閉まった一つの部屋。
のぞき窓から中を見るたび、違うものが見えてくる。
一体、この部屋は誰の部屋?
あらすじ
男の子と、女の子が、赤いドアを見つけました。
のぞき窓が一つあり、そこから中を覗いてみると・・・。
クマの人形と、女の子の人形がおしゃべり中。
女の子の人形が、クマの人形にどこへ行くのか聞いてみると、おばあちゃんのお見舞いに行くみたい。
女の子の人形も行きたいと言いますが、オオカミが出てくるからダメだと断られてしまいました。
次に覗くと、今度はフランス人形のマドレーヌと、日本人形のゆめこさんがおしゃべり中。
「こんにちは、ごきげんいかが」と挨拶するゆめこさん。
マドレーヌも「ボンジュール、コマン・タレ・ブー」と返します。
でも、ゆめこさんはどういう意味だかわからずに、頭を悩ませてしまいました。
さらに覗くと、野原に男の子の人形モリスくんと、女の子の人形メアリー先生、そして羊の人形が。
のはら保育園に、モリスくんがやってきましたが、羊もついてきちゃったみたいです。
メアリー先生に「羊はダメよ、帰りなさい」と言われてしまいました。
今度は何が見えるのでしょう?
この部屋は一体どうなっているのでしょうか?
『このへやあけて』の素敵なところ
- 次々と見えるものが変わる不思議な部屋
- 人形やおもちゃ同士の、どこかおちゃめでかわいい会話
- 最後に明かされる部屋の中
この絵本の魅力は、全貌がわからない不思議な部屋にあるでしょう。
のぞき窓を覗くたび、違うものが見える部屋。
魔法がかかっているのか・・・。
はたまた、別の秘密があるのか・・・。
ページをめくるたび、全然違う場面に頭を悩ませてしまいます。
この中がどうなっているのか気になり過ぎるのが、とても面白いところです。
読み進めるたび、どんどん膨らんでいく疑問。
子どもたちも、
「一体誰の部屋なんだろう?」
「野原もあるし、池もあるしね」
「でも、全部おもちゃだよ」
と、色々と考えていることが伺えます。
さて、全体像が気になりつつも、一つ一つの場面が面白いのも素敵なところ。
人形やおもちゃ同士の会話が、なんともおちゃめで、かわいらしいのです。
コマン・タレ・ブーがわからな過ぎて、
「こまん たれ ぶーってなにかしら。こまん たれ ぶー、こまん たれ ぶー。ああ、わかりません わかりません」
と、頭を悩ませるゆめこさん。
「わたしが一番かわいいわ。いいえ、わたしが一番よ。いえいえ、わたし。わたし、わたし、わたし、わたし、わたし。」
と、言い合う、6本のこけし。
など、なんだか微笑ましかったり、言葉遊びみたいだったりします。
どの場面を見ても、クスリと笑ってしまうような楽しさがあるのです。
楽しみつつ、気になりつつ、進んでいく物語。
でも、やっぱり気になるのは部屋の中。
安心してください。
ちゃんと、最後に部屋全体を見ることが出来ます。
そこには驚きと、納得の光景が広がっていました。
「なるほど、こういうことだったのか!」
「だから、おしゃべりしてたんだね」
と、全ての疑問が解決・・・と、思いきや、
「でも、ここちょっと違うよ」
「あれ、あの時は・・・」
と、新たな疑問が。
納得感を与えつつも、端々に想像の余地が残っているのも、この絵本の素敵なところ。
「こうだったのかな?」
と、全体を見た後だからこその想像がとても面白いのです。
そして、それを確かめるため、自然ともう一度ページをめくってしまうのです。
開かずのドアの中に広がる、楽しくて不思議な世界を覗き見る。
読み進めるほど、部屋の中がどうなっているのか気になり過ぎる絵本です。
コメント