まっくろ(5歳~)

絵本

作:高崎卓馬 絵:黒井健 出版:講談社

心に浮かんだことを描く授業。

男の子は紙を真っ黒に塗り続けた。

何日も何日も、何枚も何枚も。

そして・・・。

あらすじ

学校で、「心に浮かんだことを描いてみる」という授業の時間。

みんなが絵を描いている中、ある男の子が紙を真っ黒に塗っていた。

先生は困って「ちゃんとした絵を描きなさい」と言った。

それでも男の子は、紙を真っ黒にし続けた。

学校が終わっても。

家に帰っても。

朝になっても。

休みの日も。

大人はみんな心配した。

友だちも。

でも、男の子は手を止めなかった。

その時、不思議なことがおきた・・・。

『まっくろ』の素敵なところ

  • 「自由に描くこと」の枠を外してくれる
  • 自分の思いを貫き通す男の子
  • 最後に待っていたもの

この絵本は、「心に浮かんだことを描く」ということから始まります。

それは「自由に描くこと」でもあります。

でも、多くの子が「紙の大きさに合わせて描く」という、制限を自分でつけて描いています。

もちろん先生も。

そんな中、男の子は常識を覆し続けます。

紙の制約、時間の制約。

その姿は、芸術家そのもの。

この男の子の姿を見ていると、子どもも大人も、

「こんな方法もあるんだ!」

と、素直に驚かされます。

きっと、「自由に絵を描く」がより自由なものになるでしょう。

しかし、その姿は周囲から心配されてしまいます。

大人からも、子どもからも。

おそらく、心の心配をされたりしているのでしょう。

普通なら、それが目に入り、空気を読んでしまうかもしれません。

ですが、この絵本の男の子は一心不乱に描き続けます。

自分の描きたいもののために、周囲を気にしない強さを持っています。

その強さは、描きたいものがあるけれど、躊躇してしまう子に勇気を与えてくれるでしょう。

さて、紙を真っ黒にし続けていると、ある変化が訪れます。

真っ黒じゃない紙がいくつか現れたのです。

それは4枚の紙を合わせて作った、大きな白い丸。

そこから、男の子が描いた真っ黒の正体が判明します。

その壮大な作品に、子どもたちも、

「うわ~!」

「おっきいね!」

「本物みたい!」

と、感嘆の声。

男の子の努力と、スケール感に驚いていました。

でも、なにより完成した絵からの、男の子へのメッセージが、きっと男の子にとっては何より嬉しかったでしょう。

そして、見ている子へも、「絵を描きたいな」と思わせてくれるなにかが伝わることでしょう。

たった一人、周囲の目線を気にせず、壮大な作品を作り上げる男の子。

その姿を通して、自由に作るという意味と、自由に絵を描くための強さが伝わってくる絵本です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました