作:ソフィー・ブラッコール 訳:横山和江 出版:すずき出版
宇宙人に向けた、地球の教科書。
そこには、地球のことが、子どもの目線でわかりやすく綴られていました。
子どもの宇宙人でも、地球のことがよくわかるくらいに。
あらすじ
男の子が手紙を書いていた。
宇宙から来る誰かさんのために。
地球がどんなところか伝えるために。
地球は、太陽の近くにあって、すぐ側に月がある。
緑や茶色の所は陸地で、青いところは海。
ほとんどの人は大きな都市に住んでいる。
でも、小さな町や村、名もない場所に住んでいる人もいる。
人は色んな家に住む。
お城、ビル、車の中、船の上・・・。
家をなくすこともある。
色んな家族もいる。
子どもがたくさんの家族、子どもがいない家族、年老いた家族・・・。
人は70億以上いて、みんな体があるけど、見た目は一人ずつ違う。
双子は除いてね。
人は頭の中で、いつも何かを考えているけど、それは外からわからない。
だけど、気持ちは顔に出てしまう。
人は毎日服を着る。
どんな服を着るかは、なにをするかや、住んでいる場所によって違う。
地球にはいろんな天気があって、人を嬉しくしたり、困らせたりする。
人は色んな方法で、色んな所に行く。
地球について、教えたいことはまだまだある。
子どものこと、大人のこと、食べること、水のこと、生き物のこと・・・。
『地球のことをおしえてあげる』の素敵なところ
- 子どもの目線で描かれた、本当に色々な地球のこと
- 同じことと違うことが、直感的にわかる豊富な絵
- 宇宙人へ向けられた夢のある手紙
この絵本では、子どもの目線で、地球のことが本当にたくさん描かれます。
その内容は多岐に渡り、自然現象から、生き物、生活、心の中、成長、多様性まで、色々なことが描かれています。
その中には、気付きにくかったり、複雑な問題もあります。
例えば目に見えないもの。
そこでは、
「目に見えないものもある。幽霊、重力、電気、ばい菌、ローストチキンの匂い、はき古した靴下の臭い・・・」
と、普段は意識をしていないけれど、確実に感じているものに気付かされます。
また、争いには、
「人と人とが傷つけ合うこともある。それよりも、互いに助け合う方が、気持ちいいよね。」
と、子どもならではの、純粋でわかりやすい解決法を示してくれます。
このように、そのどれもが、子どもの目線や言葉で語られるので、とてもわかりやすく単純化されているのです。
でも、わかりやすいだけでなく、そこに鋭い真理が含まれているのが素敵なところ。
改めて、身近なことを深く考えさせてくれるのです。
また、一つの話題がたくさんの絵で描かれているのも素敵なところ。
色んな家に住んでいるという話題では、色々な国の家だけでなく、ツリーハウスや、風車まで。
たくさんの人がいるという話題では、老若男女、様々な人種、障害のある人など、たくさんの人が。
目が見えない人は、形や音から色を想像するという話題では、絵の具のチューブに見立てて、「赤ちゃんの歯の色」「目玉焼き色」「焦げたトースト色」など、生活の中で目にしたものの色を言葉で表す。
など、多種多様な絵を見ているだけで、直感的に多様性を感じられるようになっています。
説明されるのではなく、見て感じて、地球の多様性を受け入れていけるのが、とても素敵なところなのです。
さて、これらが全て、宇宙人に向けた手紙として描かれているのが、この絵本の面白いところです。
書き出しは手紙として描かれますが、地球の紹介が始まると、集中しすぎて手紙だったことを忘れてしまいます。
ですが、最後にまた手紙を書いている子へと視点が戻ってきます。
ここで、手紙だったことを思い出させてくれます。
そして、素敵なのはこの先。
最後に、今度はこの手紙を読む宇宙人へ思いを馳せます。
その子のこと、その子の住む星のこと。
この絵本は、宇宙人への疑問や質問で締めくくられるのです。
これにより、地球について膨らんだ思いは、一気に宇宙へ飛んでいきます。
「地球はこうだったけど、宇宙はどうなんだろう?」
「きっと、こんな感じだよ」
「まず、この手紙を、宇宙の言葉で読んでくれる人を探さないと!」
と、最後に世界を広げてくれ、より広い多様性に思いを巡らせてくれるのです。
宇宙人への手紙を通して、地球人も地球のこと、自分たちのことを改めて考えさせられる。
世界の多様性を、見て、感じることが出来る、絵本だからこそ描けた一冊です。
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