作:カタリーナ・ヴァルクス 訳:ふしみみさを 出版:クレヨンハウス
嘘だって、子どもにかかれば一つの遊び。
ある日、リゼッテはすごい嘘をつきに行くことにしました。
その嘘は、どんな結果をもたらすのでしょう。
あらすじ
ある日、鳥のリゼッテは、トカゲのボビと庭でおしゃべりをしていました。
その中で、「嘘をついたことがあるか」という話になりました。
二人は、すごい嘘はついたことがなかったので、すごい嘘をつきにいくことにしました。
二人が歩いていると、ゾウのポポフがやってきました。
二人はポポフに嘘をつくことに決めました。
ポポフに「何しに行くの?」と聞かれ、二人は早速嘘をつきました。
「バカンスだよ!素敵なところに旅しに行くの」と言ったのです。
すると、ポポフも一緒に行くと言い出しました。
二人は困りつつも、噓がばれないように、ポポフも連れていくことにしました。
歩きながら相談し、適当なところで「着いた!」と言えばいいということに。
しばらく行くと、地面が少し出っ張っている所がありました。
リゼッテはそれを指差し、「着いた!」と言いました。
その出っ張りを山だと言い張るリゼッテに、ポポフは納得できません。
ポポフはシャベルを持ってきて、地面を掘り、その土で山を大きくしていきました。
山はポポフの背の高さほどになり、リゼッテとボビは山に登って大喜び。
遊んでいると、地面に掘った穴に雨が降って水がたまれば、湖になると閃きました。
でも、雨は降りそうにありません。
リゼッテとボビは、ポポフに水を汲んでくるよう頼みました。
しかし、穴を掘って疲れたポポフは嫌な顔。
だけど、二人がひなたぼっこや景色を見てのんびりし始めると、手持ち無沙汰になり、結局水を汲んできました。
こうして、湖が完成しました。
湖に飛び込んだり、水をかけ合い遊ぶ三人。
この嘘から始まったバカンスの行方は、一体どうなるのでしょうか?
『リゼッテうそをつきにいく』の素敵なところ
- とっても楽しい嘘
- 嘘が本当になっていく面白さ
- 温かく見守ってくれるお母さん
普段は「嘘はダメ」と言われることが多い嘘。
この絵本ではその嘘をつきにいきます。
最初は子どもたちも、
「えー!嘘はついちゃだめだよ!」
「ひどい!」
と、否定的な声が多く上がります。
この背徳感が、この絵本の面白いところです。
ダメだとは知っているけれど、やってみたいと思う子どもたち。
その思いを、リゼッテとボビは代行してくれるのです。
ポポフを騙して、その反応を見て、楽しそうに笑っている二人。
いいことではないけれど、その純粋に楽しそうな姿は魅力的です。
でも、物語が進んでいくうち、この背徳的な雰囲気は、どんどん楽しい雰囲気に変わっていきます。
それは嘘をついていたはずなのに、段々その嘘が本当になっていくからです。
ポポフが頑張って、山を作り、湖を作って、本当のバカンスにしてしまうのです。
そして、本当になっていくにつれ、リゼッテとボビも嘘をついていたことなど忘れ、バカンスを楽しみ始めます。
この嘘が本当になっていく過程が、とても素敵なのです。
リゼッテとボビとともに、子どもたちも嘘をついていたことなど忘れてしまいます。
気付けば、最初からバカンスの計画を立て、出かけていたみたい。
みんなで心の底から楽しい時間を過ごすのです。
しかし、忘れたまま終わらないのが、この絵本の素敵なところ。
最後に嘘をついていたことを思い出させてくれます。
それがお母さんの一言。
ここで、最初嘘から始まったことを思い出し、それが本当になってしまった面白さを改めて感じさせてくれるのです。
また、実は最初の嘘をつきに行こうと相談しているところを、しっかりお母さんが見ているのも素敵なところ。
それを知った上で、止めることなく、温かく見守ってくれていたのです。
普段は「ついてはいけない」と言われる嘘。
その嘘が本当になっていき、楽しい時間に変わっていく。
なんとも不思議で面白い「嘘から出た実」な絵本です。
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