文:小沢正 画:太田大八 出版:教育画劇
河童は相撲が大好きで、とっても強い妖怪です。
そんな河童と、相撲を取ることになってしまったおじいさん。
当然、河童に勝つことなど・・・。
あらすじ
昔々あるところに、おじいさんが住んでいました。
ある日のこと、おじいさんがキュウリの畑に行ってみると、畑がめちゃめちゃに荒らされていました。
しかし、おじいさんの畑だけではありません。
近頃、あちこちで畑が荒らされていたのです。
でも、誰の仕業か全くわかりませんでした。
夜になり、おじいさんが寝ようとしていると、どこからか騒がしい話し声が聞こえてきました。
おじいさんが声のする方へ行ってみると、河童たちが相撲を取っていたのです。
おじいさんは、畑を荒らしていたのが河童たちだと気付きました。
しばらく、木の影から様子を見ていましたが、次第に面白くなり、つい大声を出して応援してしまいました。
その声に気付いた河童たち。
河童たちはおじいさんを取り囲むと、一緒に相撲を取るよう言ってきました。
仕方なしに、相撲を取ることになりましたが、おじいさんが勝てるはずもありません。
簡単に投げ飛ばされてしまいました。
転んでいられたのも束の間、次の河童が相撲を取ろうと言ってきます。
こうして、何度も相撲を取らされ、負け続けるおじいさん。
でも、河童は中々開放してくれません。
そうこうしているうち、おじいさんはふと思い出しました。
河童の頭には皿が載っていて、そこには水が入っている。
その水がなくなると力が抜けてしまうということを。
そこで、おじいさんは一つ試してみることにしました・・・。
『かっぱのすもう』の素敵なところ
- 絶望的過ぎる河童との相撲
- おじいさんの知恵袋
- 楽しすぎる擬音
絶望的過ぎる河童との相撲
この絵本では、河童とおじいさんの相撲が描かれます。
その構図が絶望的過ぎるのが、この絵本の面白いところ。
おじいさんは服を脱がされるのですが、どう見てもひょろひょろ。
絵を見ただけで、勝ち目がないことが明白です。
相撲が始まると、案の定、一瞬で転ばされるおじいさん。
そこへ新たな河童が名乗り出ます。
突き飛ばされるおじいさん。
さらに次の河童が・・・。
このループの絶望感たるや。
どんなに謝っても、辞退を申し出ても、河童は話を聞いてくれないのです。
見ていると、おじさんが心配になってきます。
「おじいさん大丈夫かな?」
「おじいさん死んじゃうよ・・・」
と、最初は笑っていた子も、笑えなくなってきます。
おじいさんの知恵袋
そんな時、おじいさんにある閃きが浮かびます。
河童の弱点を思い出したのです。
面白いのは、その弱点の活かし方。
相撲を活かして、河童の皿の水をこぼす作戦を思いつきます。
これが実に老獪で、まさにおじいさんの知恵袋。
知識と知恵を駆使して河童に勝つ姿は、とても痛快。
弱った河童との、相撲を取る姿も、とても豪快で見逃せません。
前半の弱々しさと、後半の豪快さのギャップもとても面白いところです。
楽しすぎる擬音
さて、そんな相撲の描写に欠かせないのが、擬音です。
この擬音が、面白過ぎるのも、この絵本の素敵なところ。
相撲を取るたび、違う擬音が使われます。
そのどれもが、子どもが聞いたら笑ってしまうこと間違いなし、直球ど真ん中なものばかり。
「どっすーん」という、スタンダードなものから始まり、
「すっころりーん」
「ぴょんぴょこぴょーん」
皿から水が流れる時も、
「じゃぼじゃぼじゃぼ」
「ちゃぽちゃぽちゃぽ」
と、しっかり変えてくるこだわりよう。
特に最後の相撲では、痛快さと面白さがふんだんに詰まった相撲と、擬音を見せてくれます。
この擬音が、盛り上げつつも、適度に肩の力を抜いてくれ、ずーっと楽しく絵本に引き込んでくれるのです。
二言まとめ
絶望的過ぎる状況を、知識と知恵でひっくり返す痛快さがたまらない。
絵と擬音で、相撲が大いに盛り上がる昔話絵本です。
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