作:たかのもも 出版:フレーベル館
怖い夢と引き換えに、夢を叶えてくれるゆめたまご。
でも、孵し方がわかりません。
いくら待っても孵らずに、諦めかけたその時・・・。
あらすじ
女の子このみは、真夜中にこわい夢を見て目を覚ましました。
夢の続きを見るのが怖くて、なかなか眠ることが出来ずにいると・・・。
トントントンと、誰かが窓を叩きました。
このみが窓の外を覗いてみると、バクに乗った、卵のようなおじさんがこちらを見ていました。
聞いてみると、おじさんは怖い夢の匂いがしたからやってきたのだそう。
バクがお腹を空かせているので、怖い夢を食べさせて欲しいと言うのです。
そして、お礼に願い事を叶える、ゆめたまごまでくれるのだと。
このみは迷わず、怖い夢を食べてもらいました。
おかげでぐっすりと眠ることが出来ました。
次の日、このみはゆめたまごにお願い事をしてみました。
しかし、なにも起こりません。
このみは、卵の孵し方を聞き忘れたことに気付きました。
そこで、卵を温めてみることにしました。
毎日大切に温めながら、願い事を考えます。
食べきれないほどの大きなケーキにしようか・・・。
動物とお話しできるのもいい・・・。
空を飛べるようにしてもらうのはどうか・・・。
しかし、ゆめたまごが孵ることはありませんでした。
どんなに待っても孵らないゆめたまご。
ついにこのみは諦めて、孵してあげられなかったゆめたまごを、泣きながら地面に埋めてあげました。
ところが、次の日ゆめたまごを埋めたところから、可愛い芽が出ていたのです。
このみは嬉しくて毎日水をあげました。
すると、芽はどんどん大きくなり、やがて立派な木になりました。
そして、花が咲くと卵のような実がたくさんなったのです。
これは一体何の卵なのでしょう?
今度こそ孵すことが出来るのでしょうか?
『ゆめたまご』の素敵なところ
- 気になる不思議な卵の中身
- 独創的な絵で描かれるシンプルで優しい物語
- 怖い夢を見ても大丈夫と希望をくれる
気になる不思議な卵の中身
この絵本で、誰もが気になり、ドキドキワクワクさせてくれるのは、卵の中身でしょう。
なんたって、願いの叶うゆめたまご。
ワクワクしないはずがありません。
でも、どうやって叶うのか?
何が出てくるのか?
どうやって願いを叶えてくれるのか?
まで、すべてが謎に包まれています。
そんなゆめたまごは、どれだけ温めても孵りません。
これには子どもたちも、ドキドキです。
諦めて埋める時には、
「産まれなかった・・・」
「かわいそう・・・」
と、ワクワク感はすっかりしぼみ、涙を流すこのみとともに、悲しい気持ちが広がります。
でも、そこから木が生え、どうなるのかと思ったら、また卵が実ったのです。
これには子どもたちの期待もうなぎ上り。
「今度は孵るかな!」
と、最初にも増して、期待が膨らみワクワクドキドキ。
この、最初から最後まで卵の中身が気になる流れが、卵が孵った時の感動へと繋がっているのだと思います。
独創的な絵で描かれるシンプルで優しい物語
また、この絵本は表紙からもわかる通り、かなり独創的な絵で描かれています。
絵のタッチもさることながら、このみが考えていることが、頭から直接生えているような絵で、可視化されていたりします。
動物もリアルで、マスコットのような可愛さはありません。
でも、それが「ゆめのたまご」という不思議なものを中心とした物語と、とても溶け合っているのです。
どこか境界線が曖昧な夢の中のような・・・。
どこか現実の世界のような・・・。
そんな不思議な感覚が、ゆめたまごに奇妙な現実感を与えてくれています。
また、独創的な絵に対して、物語がとてもシンプルで優しいのも面白いところ。
シンプルゆえに、とても自然に頭に入ってきます。
卵が孵らなかった時、願い事が叶わなかったことでなく、卵を孵してあげられなかったことに泣くように、このみの優しさが絵本全体に広がっているのも素敵なところです。
怖い夢を見ても大丈夫と希望をくれる
さて、きっと誰もが怖い夢を見て目を覚まし、中々寝付けなかった経験があるのではないでしょうか。
そんな時に、この絵本は優しく希望をくれます。
「もしかしたら、バクに乗ったおじさんが来てくれるかも」
そんな風に思うと、怖い夢を見ても悪くないと思えるから不思議です。
怖くてしょうがない夢が、この絵本が終わったころには、ゆめたまごに変わっているのですから。
二言まとめ
独創的な絵と世界観の中で描かれる、とてもわかりやすく、希望に満ちた物語。
読めば怖い夢を希望に変える、不思議な力をもらえる絵本です。
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