文:谷真介 絵:赤坂三好 出版:佼成出版社
なぜ、月にウサギが住んでいるか、知っていますか?
そこには昔、人間になりたいと願った動物たちの、悲しくも美しい出来事があったからなのです。
あらすじ
昔、森の中で、ウサギとキツネとサルが一緒に暮らしていました。
3匹が「生まれ変わったら人間になりたい」と話していると、カワウソがやってきました。
カワウソは、人間にいいことをたくさんすると、人間になれるのだと教えてくれました。
それから数日後、ウサギが、川の近くで倒れている旅人を見つけました。
ウサギがみんなに知らせると、急いで旅人を助けに行きました。
旅人は痩せたおじいさんでした。
熱を出していたので、動物たちは自分たちの住処へ連れていき、介抱しました。
介抱の甲斐あり、おじいさんは少しずつ元気になりました。
それを見た動物たちは、順番に美味しいものを持ってくることにしました。
まずはサルが森へ行き、果物や木の実をたくさんとってきました。
おじいさん一人では食べきれないので、みんなで食べることにしました。
次の日はキツネが出かけ、人間の村の畑から、少しずつ野菜や米を持って帰ってきました。
さらに次の日は、カワウソが川からたくさんの魚をとってきました。
そして、次の日はウサギの番です。
森へ出かけましたが、ごちそうが中々見つかりません。
何も持たずに帰ると、動物たちはがっかりしてしまいました。
それを見て、ウサギはまた森へ出かけていき、今度はたくさんの薪を背負って帰ってきました。
ウサギは焚火へ、どんどん薪をくべました。
火もどんどん大きくなっていきます。
すると、ウサギが「何もごちそうすることが出来ないから、ぼくのお肉を食べてください」と言って、火に飛び込んだのです。
止めるのもむなしく、ウサギは火の中へ消えてしまいました。
このままウサギは燃え尽きてしまうのでしょうか・・・。
『月へいったうさぎ』の素敵なところ
- 楽しそうな5人での暮らし
- ウサギの悲しすぎる頑張り
- きっとお月見が、より深いものになる
楽しそうな5人での暮らし
この物語は、動物たちが旅人のおじいさんを助けたところから、大きく動きます。
弱っているおじいさんを、一生懸命介抱する動物たち。
やがて、元気になったおじいさんと動物たちは一緒に暮らし始めます。
ともにご飯を食べる姿は、とても楽しく幸せそう。
一日ずつ、ゆっくりと描写されているのも、どんどん仲が深まっていく様子を感じさせます。
みんな笑顔で焚火を囲み、本当の家族のように過ごしています。
ウサギの悲しすぎる頑張り
しかし、長くは続きません。
ごちそうを用意できなくて、思い悩んだウサギは悲しすぎる行動に出ます。
それを慌てて止めようとするおじいさん。
飛び込んだウサギを見て、おろおろとおじいさんにすがりつく動物たち。
そこにはウサギとの絆がしっかりと見て取れます。
だからこそ、よりウサギの行動が悲しいのです。
「そんなこと望んでないのに」
「話をしてくれればよかったのに」
そんな思いが渦巻きます。
仲の良さが伝わっているからこそ、心の底から悲しみを感じる。
それがこの絵本の素敵なところでもあるのですが・・・。
きっとお月見が、より深いものになる
この悲しい出来事から、最後は月に行ったウサギ。
この物語を読んだ後に月を見ると、色々なことが頭に浮かんできます。
「ウサギさんは、月で楽しく暮らしているのかな?」
「友だちはいるのかな?」
「お餅ついてるから、きっと元気だよ」
と、空に浮かぶ月を見上げた時、「きれい」だけでなく、もっと深い感情が浮かび上がってくることでしょう。
きっと、お月見をより感慨深いものにしてくれると思います。
二言まとめ
お月様に、なぜウサギが住んでいるのかを描いた悲劇の物語。
悲しくも美しいこの物語を見たら、よりお月様が美しく、愛おしく感じることでしょう。
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