せかい一わるいかいじゅう(4歳~)

絵本

作:パット・ハッチンス 訳:乾侑美子 出版:偕成社

ある怪獣の家に、とても悪い赤ちゃんが生まれました。

怪獣の世界では、どれだけ悪いかが大切です。

みんなが赤ちゃんに、ちやほやする中、お姉ちゃんは面白くなさそうです。

あらすじ

怪獣の女の子ヘイゼルの家に、赤ちゃんが生まれました。

赤ちゃんの名前はビリー。

お父さんは、「世界一悪い子になるぞ」と嬉しそうです。

ヘイゼルが「世界一悪い怪獣になるのは私だもん」と言っても、誰も聞いてくれません。

怪獣のおじいさんとおばあさんもビリーに夢中です。

ビリーが鉄の棒をかじって曲げると大喜び。

それを見て、ヘイゼルもやって見せますが、誰も見てくれません。

その後も唸ったり、カーテンにぶら下がったりと、注目を集めるビリー。

それを見て、ヘイゼルも同じことをやって見せますが、やっぱり誰も見てくれません。

そんな中、お父さんとお母さんは、ビリーを「世界一悪い怪獣コンクール」に出すことにしました。

ヘイゼルは、他の子が優勝すればいいのにと思いました。

しかし、優勝したのはビリーです。

優勝したビリーを囲み、「世界一悪い怪獣になるのはビリーだ」と言うのを聞いて、ヘイゼルはあることを思いつきました・・・。

『せかい一わるいかいじゅう』の素敵なところ

  • 「悪いこと」を褒められる怪獣の世界
  • 弟ばかり注目されるのが面白くないお姉ちゃんの気持ち
  • なんだかんだで一緒にいるのが楽しい

「悪いこと」を褒められる怪獣の世界

この絵本で、まず驚かされるのが、怪獣ならではの誉め言葉でしょう。

怪獣の世界では「悪いこと」が、誉め言葉のですから。

人間の世界とは正反対です。

子どもたちも、

「え!?悪いの?」

「悪いのに褒められてるよ」

と、最初は混乱。

でも、この世界観に慣れてくると、

「怪獣だもんね!」

「うわ!すごい悪いことしてる!いいね!」

と、すっかり怪獣の価値観に変わってしまいます。

普段は叱られることを、思い切り褒められる面白さは、この絵本ならではでしょう。

弟ばかり注目されるのが面白くないお姉ちゃんの気持ち

さて、そんな人間の世界と正反対の怪獣の世界ですが、変わらないものもあります。

それがお姉ちゃんの複雑な心境です。

赤ちゃんばかり可愛がる大人たち。

何をしても褒められる赤ちゃん。

お姉ちゃんは面白くありません。

自分のことをもっと見てもらいたくて色々しますが空回り。

この、なんとかしたくても、何もできないもどかしさや、自分のことをもっとみて欲しい気持ちは、怪獣も人間も変わらないのです。

お姉ちゃんやお兄ちゃんは、ヘイゼルの気持ちがとてもよくわかるでしょう。

なんだかんだで一緒にいるのが楽しい

でも、それとは裏腹に、弟や妹が大切なのも本当の気持ちです。

一緒にいたいと思うし、守ってあげたいとも思います。

その気持ちも見事に、かつ怪獣流に描かれているのがこの絵本の素敵なところ。

人間の世界では出来ないような悪いことを通して、その気持ちを再確認するのです。

これには子どもたちも、

「え!?そんなことしちゃうの!?」

「やっばー!悪すぎるよ!」

と、怪獣の世界に慣れてきた子どもたちも驚きを隠せませんでした。

二言まとめ

ヘイゼルの姿を通して、お姉ちゃんの複雑な気持ちを代弁してくれる。

普段、我慢しているお兄ちゃん、お姉ちゃんの心を解放してくれる絵本です。

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