作:パット・ハッチンス 訳:乾侑美子 出版:偕成社
ある怪獣の家に、とても悪い赤ちゃんが生まれました。
怪獣の世界では、どれだけ悪いかが大切です。
みんなが赤ちゃんに、ちやほやする中、お姉ちゃんは面白くなさそうです。
あらすじ
怪獣の女の子ヘイゼルの家に、赤ちゃんが生まれました。
赤ちゃんの名前はビリー。
お父さんは、「世界一悪い子になるぞ」と嬉しそうです。
ヘイゼルが「世界一悪い怪獣になるのは私だもん」と言っても、誰も聞いてくれません。
怪獣のおじいさんとおばあさんもビリーに夢中です。
ビリーが鉄の棒をかじって曲げると大喜び。
それを見て、ヘイゼルもやって見せますが、誰も見てくれません。
その後も唸ったり、カーテンにぶら下がったりと、注目を集めるビリー。
それを見て、ヘイゼルも同じことをやって見せますが、やっぱり誰も見てくれません。
そんな中、お父さんとお母さんは、ビリーを「世界一悪い怪獣コンクール」に出すことにしました。
ヘイゼルは、他の子が優勝すればいいのにと思いました。
しかし、優勝したのはビリーです。
優勝したビリーを囲み、「世界一悪い怪獣になるのはビリーだ」と言うのを聞いて、ヘイゼルはあることを思いつきました・・・。
『せかい一わるいかいじゅう』の素敵なところ
- 「悪いこと」を褒められる怪獣の世界
- 弟ばかり注目されるのが面白くないお姉ちゃんの気持ち
- なんだかんだで一緒にいるのが楽しい
「悪いこと」を褒められる怪獣の世界
この絵本で、まず驚かされるのが、怪獣ならではの誉め言葉でしょう。
怪獣の世界では「悪いこと」が、誉め言葉のですから。
人間の世界とは正反対です。
子どもたちも、
「え!?悪いの?」
「悪いのに褒められてるよ」
と、最初は混乱。
でも、この世界観に慣れてくると、
「怪獣だもんね!」
「うわ!すごい悪いことしてる!いいね!」
と、すっかり怪獣の価値観に変わってしまいます。
普段は叱られることを、思い切り褒められる面白さは、この絵本ならではでしょう。
弟ばかり注目されるのが面白くないお姉ちゃんの気持ち
さて、そんな人間の世界と正反対の怪獣の世界ですが、変わらないものもあります。
それがお姉ちゃんの複雑な心境です。
赤ちゃんばかり可愛がる大人たち。
何をしても褒められる赤ちゃん。
お姉ちゃんは面白くありません。
自分のことをもっと見てもらいたくて色々しますが空回り。
この、なんとかしたくても、何もできないもどかしさや、自分のことをもっとみて欲しい気持ちは、怪獣も人間も変わらないのです。
お姉ちゃんやお兄ちゃんは、ヘイゼルの気持ちがとてもよくわかるでしょう。
なんだかんだで一緒にいるのが楽しい
でも、それとは裏腹に、弟や妹が大切なのも本当の気持ちです。
一緒にいたいと思うし、守ってあげたいとも思います。
その気持ちも見事に、かつ怪獣流に描かれているのがこの絵本の素敵なところ。
人間の世界では出来ないような悪いことを通して、その気持ちを再確認するのです。
これには子どもたちも、
「え!?そんなことしちゃうの!?」
「やっばー!悪すぎるよ!」
と、怪獣の世界に慣れてきた子どもたちも驚きを隠せませんでした。
二言まとめ
ヘイゼルの姿を通して、お姉ちゃんの複雑な気持ちを代弁してくれる。
普段、我慢しているお兄ちゃん、お姉ちゃんの心を解放してくれる絵本です。
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