オランダ民話 文:ホイテーマ 絵:チェレスチーノ・ピヤッチ 訳:おおつかゆうぞう
出版:福音館書店
いつも穏やかで、幸せそうなフクロウの夫婦。
それを見て、いつもケンカばかりしている鳥たちは、その秘密を聞いてみることにしましたが・・・。
あらすじ
古くて、崩れかかった石壁の中に、フクロウの夫婦が住んでいました。
二羽のフクロウは、ずっと幸せに暮らしていました。
すぐ近くに百姓家があって、そこでは色々な鳥が飼われていました。
この鳥たちが考えるのは、食べることと飲むことばかり。
腹が一杯になると、今度はケンカを始めます。
一年中同じことの繰り返しでした。
ある日、クジャクが石壁の方を眺めると、フクロウの夫婦が見えました。
クジャクは、ケンカをしないフクロウを見て、不思議に思いました。
そして、「もしかしたら幸せなのかもしれない」とも。
クジャクが、このことを他の鳥たちに話すと、フクロウが静かに仲良く暮らしている理由を聞いてみることになりました。
代表で、クジャクがフクロウの元へお願いに行くと、フクロウは快く引き受け、他の鳥たちも呼んでくるよういいました。
鳥たちが集まると、フクロウは話し始めました。
春が来るのを眺めていると本当に嬉しくなってくること。
素晴らしい夏が来て、なにもかもが輝くころに、緑の森へ飛んでいき、森の中で過ごすこと。
森の中の静かな木陰にとまっていると、幸せで安らかな気持ちで一杯になること。
秋になり、クモが巣を張り、落ちる葉を少しの間、留めておくこと。
全ての葉が落ち、雪に覆われるころ、石壁の古巣に帰ってきて、静かに暮らしているのだということを。
それを聞いた鳥たちは・・・。
『しあわせなふくろう』の素敵なところ
- 「幸せってどんなことだろう?」と考えさせられる
- それぞれの幸せを否定しない
- 美しく文学的な季節の表現
「幸せってどんなことだろう?」と考えさせられる
この絵本の素敵なところは、普段あまり意識していない、「幸せ」について考えるきっかけをくれるところです。
賑やかで、物欲や自己顕示欲の強い鳥たちの幸せ。
対して、四季を感じ、穏やかな時間を過ごすフクロウの幸せ。
それぞれを改めて見てみることで、「幸せってどういうことだろう?」「自分の幸せはなんだろう?」と、考えさせられるのです。
それぞれの幸せを否定しない
さらに、この絵本の素敵なところは、そのどちらの幸せも否定しないところです。
フクロウのような生き方をしていない鳥たちに、悪いことが起こることも無ければ、後悔することもありません。
ただ、フクロウの幸せについて、話を聞くだけだからです。
フクロウはとても幸せそうです。
でも、人によっては退屈かもしれません。
そんな人の幸せも、この絵本では否定されず、審判されたりもせず、静かに物語が終わるのです。
美しく文学的な季節の表現
さて、この絵本には物語以外にも、とても素敵なところがあります。
それが美しくて文学的な文章表現です。
特に、フクロウが四季を語る場面は、本当に美しく、四季折々の自然が生き生きと眩しく語られます。
春は、
「あらゆるものが、一斉に冬の眠りから目を覚ますのです。木にはたくさんの蕾が膨らみ、葉は青々と茂ってきます。」
夏は、
「蝶々は、花から花へひらひらと舞い歩いて、金色の花から蜜を集めます。いよいよ素晴らしい夏が来たのです。」
というように、思わずその季節が、頭の中に浮かんでくるのです。
二言まとめ
穏やかなフクロウと、賑やかな鳥たちのそれぞれの幸せ。
それらを見比べ、「幸せってなんだろう?」と、じっくり考えるきっかけをくれる絵本です。
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