文:ボニー・ベッカー 絵:ケイディ・マクドナル・デントン 訳:横山和江 出版:岩崎書店
誕生日が大嫌いなクマくん。
でも、親友のネズミくんは、どうしても誕生日を祝いたい。
あの手この手で祝いに来るネズミくんに、クマくんは・・・。
あらすじ
今日はクマの誕生日です。
でも、クマは誕生日が大嫌いでした。
誕生日の日は一日中忙しいと決まっていて、今日は家中大掃除をしています。
そこに、戸を叩く音が聞こえてきました。
玄関のドアを開けると、そこにはネズミが立っていました。
ネズミはクマに誕生日パーティーの招待状を見せ、「おめでとう!」と言いました。
しかし、クマは招待状など出した覚えはありません。
招待状をよく見ると、ネズミが書いたものでした。
ネズミがクマをお祝いしたくて書いたのです。
クマは「誕生日パーティーは嫌いだ」と、ネズミを家から追い出してしまいました。
しばらくすると、裏口の戸を叩く音が聞こえました。
出てみると、配達屋さんが誕生日の風船を届けに来ていました。
でも、どう見てもネズミです。
クマは風船を受け取らず、ドアを閉めてしまいました。
さらにしばらくして、窓を叩く音が聞こえました。
窓を開けると、郵便屋さんが誕生日カードを届けに来ていました。
だけど、どこから見ても、やっぱりネズミです。
ネズミの話が終わらぬうちに、クマは窓を閉めてしまいました。
クマが掃除を再開すると、暖炉の中からカリカリと引っ掻くような音がします。
そして、暖炉の中から、サンタクロースが飛び出してきたではありませんか。
もちろん、そのサンタクロースもネズミです。
クマはやっぱり、プレゼントも受け取らず、ネズミを追い返してしまいました。
クマはまた掃除を始めました。
掃除をしながら、自分がプレゼントを、一度も貰ったことがなかったことに、気が付きました。
なんだか、ネズミのプレゼントの中身が気になりだした頃・・・。
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴りました。
一体今度は何をしてくるのでしょうか?
『おたんじょうび、おことわり?』の素敵なところ
- クマのことが大好きな、ネズミの折れない心
- ネズミのサプライズ引き出しの幅広さ
- 素直じゃないクマと、真っ直ぐなネズミのコンビ
クマのことが大好きな、ネズミの折れない心
あの手この手で、クマを祝おうとするこの絵本。
ネズミは色々なアイディアで、クマの所にやってきますが、かなりきつめに追い返されます。
とても嬉しそうに、登場するネズミの姿と、追い返される時のしょんぼりした姿のギャップが、なんだか心に響きます。
子どもたちも、
「ネズミくん、可愛そうだね・・・」
「なんで、おめでとう嫌なの!」
と、ネズミのことを庇います。
でも、次の場面では初めて来たかの如く、堂々と満面の笑顔で登場するネズミ。
そして、しょんぼり帰ります。
これを繰り返すこと5回!
ネズミの心が強すぎます!
しかし、裏を返せば、それだけしてもクマのことを祝いたいほど、心からクマのことを好きで、大切だと思っていることでもあるのです。
クマの冷たい対応と、それでもめげずに祝いに来るネズミの姿が、実は二人の絆を浮き立たせてくれています。
ネズミのサプライズ引き出しの幅広さ
そんなネズミの祝い方はバリエーション豊富です。
あれでダメなら、こっちを試す。
招待状、風船、誕生日カード、プレゼント・・・。
色んな方面から攻めていきます。
さらには、渡すものに合わせて、配達屋さん、郵便屋さん、果てはサンタクロースまで。
色々なものに変装していく徹底ぶり。
よく思いつくなと感心してしまいます。
そのどれもが心底楽しそうなのも素敵です。
子どもたちも、最初は、
「貰ってくれないね」
「また、追い出されちゃった」
と、一喜一憂していましたが、中盤くらいになってくると、
「尻尾も隠さなきゃ!」
「あ、耳が見えちゃってる!」
など、バレると追い返されるので、真剣にバレない方法を考えているのも面白いところです。
素直じゃないクマと、真っ直ぐなネズミのコンビ
さて、そんな一見相性の悪そうなネズミとクマのコンビ。
ですが、ネズミの真っ直ぐさと行動力があるからこそ、素直じゃないクマと距離を詰められます。
そして、そんな素直じゃないクマのことを、ネズミがそのまま丸ごと好きなことがなにより伝わってきます。
このビックリするくらいの真っ直ぐさと、素直じゃなさのコンビが見ていて気持ちよく、微笑ましく、ほっこりさせてくれるのです。
クマは決してありがとうなんて言いません。
でも、ネズミはとても満足そう。
そんな2人の自然体な関係が、とても素敵なところです。
二言まとめ
いくら断られても折れないネズミと、何度来ても断るクマ。
そんな2人のやり取りから、「友だちっていいな~」と思えるほっこり絵本です。
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