作:ジョン・バーニンガム 訳:谷川俊太郎 出版:BL出版
とても手のかかる犬がいた。
でも、その犬はとても素直な犬になった。
そのきっかけは、自分で運転できる車を手に入れたから。
あらすじ
アリス・トラッジと、息子のノーマンは犬を飼っていた。
犬の名前はマイルズ。
とてもやっかいな犬だ。
呼ばれても来ない。
散歩もドッグフードも雨も嫌い。
うるさく吼えるし、他の犬を嫌がる。
でも、そんなマイルズのことを、アリス・トラッジとノーマンは大好きだった。
マイルズが本当に好きなのは、車で出かけ、丘の上のカフェに行くこと。
けれども、アリス・トラッジは、毎日のように、犬のためだけにカフェに行くのは嫌だった。
そんな時、お隣のハディさんが声をかけてきた。
マイルズにはマイカーが必要だと。
さらにハディさんは、犬用の車を作ってくれるという。
ハディさんは車を作り始めた。
毎日学校が終わると、マイルズとノーマンは車を見に行った。
そして、とうとうマイルズの車が出来上がった。
マイルズは何度も練習し、車の運転を覚えた。
ある朝、アリス・トラッジはノーマンを学校へ送っていけず、困っていた。
そこで、ノーマンはマイルズの車に乗り、学校へ送ってもらうことにした。
それ以来、ノーマンとマイルズは、内緒でドライブへ行くようになった。
朝日の海へ、緑の田舎道へ、秋の落ち葉の中へ、冬の雪の中へ。
次第に、マイルズは素直になった。
でも、段々と・・・。
『ドライバー・マイルズ』の素敵なところ
- 優秀過ぎるハディさん
- ノーマンとマイルズの2人だけの時間
- 時の流れの悲しさと、明るさが混ざり合った最後の場面
優秀過ぎるハディさん
この絵本は、犬のマイルズがマイカーを手に入れる所から、物語が大きく動き出します。
その全てのきっかけが、お隣に住むハディさん。
的確にマイルズに必要なものを導き出し、さらには犬用の車を作ってしまうのです。
もう優秀過ぎて言葉も出ません。
子どもたちも、
「作れるのかな?」
と、疑問視していましたが、車が完成すると、
「本当に出来た!」
「かっこいい!」
「ハディさんすげー!」
など、その腕前にビックリ。
称賛の声が上がっていました。
ノーマンとマイルズの2人だけの時間
こうして完成したマイカー。
ノーマンのことを、学校へ送って行ったのがきっかけで、2人は内緒のドライブを始めます。
子どもと愛犬、2人でのドライブ。
この時間が本当に素敵。
ロケーションも季節も様々で、早朝の海辺、新緑の田舎道など、どれもが見開き1ページを使い、見晴らしの良い景色が描かれます。
こんなシチュエーションに憧れがないはずありません。
どんな話をしたんだろう?
海で遊んだりしたのかな?
など、色々な想像も膨らみます。
大人に邪魔されることもなく、好きなようにどこにでも行ける夢のような時間です。
時の流れの悲しさと、明るさが混ざり合った最後の場面
でも、どんなに楽しい時間でも、終わりの時は訪れます。
これだけのキラキラした時間だったからこそ、最後の場面の悲しさや寂しさが際立つのです。
けれども、悲しさや寂しさだけで終わらせないのも、この絵本のとても素敵なところです。
明るい希望も残してくれているのです。
その希望を抱かせてくれるのはやっぱりこの人。
ハディさんです。
ハディさんの行動をきっかけに、ノーマンとマイルズの明るく楽しいその後を、想像できる最後の場面。
この終わらせ方が、本当に素敵だなと思うのです。
二言まとめ
犬が運転し、子ども同士でドライブを楽しむという、自由で夢のような時間が楽しめる。
楽しく、美しい、その瞬間にしか味わえない輝きが詰め込まれた絵本です。
コメント