作:オーシル・カンスタ・ヨンセン 訳:ひだにれいこ 出版:福音館書店
物を集めるのが大好きな男の子。
でも、集め過ぎて、しまう場所がなくなってしまいます。
そこで、しまうのではなく、展示してみることにしましたが・・・。
あらすじ
丸太の男の子キュッパは、森の小さな家で暮らしています。
キュッパは色々な物を集めるのが大好き。
火曜日は森へ散歩に行き、落ちているものを集めます。
葉っぱ、釘、傘、木の枝・・・。
色々なもを拾い、家に帰ると、拾ってきたものを全て床に広げました。
そして、百科事典で拾ってきたものを調べ、名前がわかると分類し、ラベルをつけて箱にしまうのです。
しかし、箱も引き出しも、もう一杯。
しまうところがありません。
そこで、おばあちゃんに電話して相談することにしました。
おばあちゃんは、キュッパと前に行った石の博物館のことを思い出させ、キュッパも博物館を作ってみたらどうかと言いました。
キュッパは早速、博物館を始める準備に取り掛かりました。
家の中に展示室を作り、お知らせを出し、いよいよ会館の日。
キュッパの博物館には、たくさんの人がつめかけました。
キュッパは緊張しましたが、お客さんに展示物を紹介し、案内していきます。
キュッパの博物館は大盛況。
連日、たくさんのお客さんがやってきました。
しばらくは楽しかったキュッパ。
ですが、段々とうんざりしてきました。
忙しすぎて、以前のように散歩にもいけないし、仲の良いみんなでおやつを食べたりも出来なかったからです。
博物館を始めて一週間後、キュッパは閉館することに決めました。
けれど、キュッパはまた困ってしまいました。
博物館をやめると、しまう場所がなくなってしまうのです。
そこで、またおばあちゃんに電話をかけ相談することに。
すると、また石の博物館に行った時のことを思い出させ、今度は見終わった後になにをしたかをキュッパに聞きました。
キュッパがそこでしたこととは?
そして、その時の記憶が、どんな役に立つのでしょうか?
『キュッパのはくぶつかん』の素敵なところ
- 見ているだけで楽しくなるキュッパのコレクション
- 一つの行動が色々なことに繋がる面白さ
- 集めたものを分類したくなってくる
見ているだけで楽しくなるキュッパのコレクション
この絵本で目を引くのは、やはりたくさんの物でしょう。
表紙からすでに、とても賑やか。
もちろん、絵本の中にもたくさんの物が出てきます。
森に出かければ、本当に色んなものが落ちていて、
「あ、メガネもあるよ!」
と、発見がとまりません。
しかし、中でもすごいのは、キュッパが拾ってきたものを床に広げた場面です。
見開き一ページに、細かく描かれたもの・もの・もの・・・。
色んな種類の松ぼっくりに、枝、帽子、靴下、ホッチキス。
車のタイヤや鉄パイプまであるのです。
じっくり見ているだけで面白く、話が先に進みません。
「まつぼっくりだ!」
「プロペラ!?」
「これなんだろう?」
驚きと笑いが、止まら無くなってしまいます。
もちろんその後も、箱や引き出しの中、展示したものなどなど、細かく描き込まれたものたちが、見る人をこれでもかと楽しませてくれるのです。
一つの行動が色々なことに繋がる面白さ
また、面白いのは溢れるものばかりではありません。
その物語も、とても深みのある面白いものになっています。
それが、一つ行動を起こすと、いいこと、悪いこと、色々なことに繋がっていくところです。
物を集めると、しまう場所がなくなります。
そこで博物館にしてみますが、そこでめでたしめでたしではありません。
最初は張り切り楽しいですが、自分の時間がなくなります。
でも、やめるとしまう所がなくなってしまうし・・・。
と、全てのことがいい面と、悪い面両方に繋がり、それが描かれるのが素敵なところ。
色々な要素が複雑に絡み合っていること、物事にはいろんな面があることを自然に伝えてくれるのです。
子どもたちも、
「博物館いいね!」
と、手放しに喜んでいますが、キュッパの苦労も知ると、
「そっか~、ずーっとやるの大変だもんね。」
と、改めて気付かされているようでした。
集めたものを分類したくなってくる
さて、素敵なところはまだあります。
それが、読むと集めたものを分類したくなることです。
元々、物を集めるのが大好きな子どもたち。
でも、集めた後は放置しがちです。
ですが、この絵本では、それを分類して取っておく方法がわかりやすく描かれます。
それはまさにコレクション。
見ていると、自分も集めたものを分類してみたくなってきます。
そこから、自分だけの博物館など、その先の遊びにも繋がるかもしれません。
この絵本は、子どもの習性とも言えるような、集めることをさらに次の遊びへ発展させるヒントを、たくさんくれるのです。
二言まとめ
ページの中に溢れる物を見ているだけで、たくさんの発見が楽しめる。
自分も集め、分類し、コレクションを作りたくなってくる絵本です。
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